東北大、「ジグザグ型」有限長CNTの化学合成に成功。すべての型の合成法が出揃う

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東北大学の磯部寛之教授の研究グループが、「ジグザグ型」の有限長カーボンナノチューブ(CNT)のボトムアップ化学合成に成功したと発表した。世界初の成果であるとする。これまで「らせん型」と「アームチェア型」の有限長CNTの化学合成については研究例があったが、「ジグザグ型」だけが実現していなかった。今回「ジグザグ型」が合成されたことで、有限長CNTの3つの基本型の化学合成法が揃ったことになる。2012年7月16日付の米国化学会誌(Journal of The American Chemical Society)に論文が掲載されている。

CNT分類図。左からアームチェア型、らせん型、ジグザグ型 (出所:東北大学)

合成された有限長CNTは、ベンゼン環が環状につながったもので、CNTとしては最短の構造となる。磯部氏らのグループは2011年10月、クリセンと呼ばれる芳香族分子4つをカップリング反応で環状につなげる化学合成によって「らせん型」「アームチェア型」を混合物として合成する方法を報告していた。今回これにつづき、クリセン分子をつなげる位置を変えることで「ジグザグ型」単一種の選択的な化学合成を実現した。

ボトムアップ化学合成されたジグザグ型有限長CNT(着色部分)と、その延長構造をもつCNT(灰色部分)。赤と青は互いに鏡像体の関係にある。両者ともカイラル指数は(16,0)となる (出所:東北大学)


 
「ジグザグ型」の有限長CNTは反応性が高いために、合成は困難であるとの理論予測も報告されていた。今回の成果はこの予測を覆すものとなる。

さらに、X線を用いた分子構造解析により、これまでに想定されていなかったナノチューブの織り込み構造も発見された。今回の有限長CNTの開口端には脂肪鎖と呼ばれる細い分子鎖が導入されているが、この分子鎖が別のナノチューブ分子の内部空間に取り込まれることでナノチューブ分子が互いに織り込まれ、紐状の組織化構造をつくりあげるという。

ボトムアップ化学合成されたジグザグ型有限長CNTの結晶構造解析からの分子構造。2つの鏡像体が脂肪鎖を介して絡まり合う構造が発見された (出所:東北大学)


 

ジグザグ型有限長CNTの紐状組織化構造。結晶構造解析からCNTが絡まり合って紐状に連なる構造が発見された (出所:東北大学)


 
現状のCNT合成プロセスでは、構造が異なる様々な型のCNTが同時に形成されるという性質がある。CNTの構造は「アームチェア型」「らせん型」「ジグザグ型」の3種類に大別され、それぞれの型の中にさらに細かな分類がある。またCNTの太さ(口径)や長さも様々なものが存在している。これらの構造・形状の違いがCNTの材料特性を大きく左右するため、精密な特性解明や機能開発のためには、明確な構造をもった単一種のCNTが要求される。最近になって、有限長CNTを一種類の物質としてボトムアップ化学合成・分離する試みが、世界中で始まっている。

CNTは、半導体的な電気特性をもつものと金属的な電気特性をもつものが存在しており、この違いもCNTの結晶の巻き方に影響されて決まる。半導体型CNTと金属型CNTがランダムに混在するバルクCNTから半導体型、金属型を選択分離する技術はすでにあるが、もともとの成長段階から半導体型と金属型を作り分ける方法はいまだ確立されていない。これが、CNTのデバイス応用を制限するハードルとなっている。シリコンのトランジスタや金属配線などを代替する電子デバイス材料としてCNTを利用するためには、バルクからの分離ではなく、デバイスの製造プロセスに組み込める形で半導体型/金属型の選択的成長を行う必要があると考えられるからである。

今回の研究成果によって構造の異なる有限長CNTの選択的合成が可能になったため、原理的には、有限長CNTを伸長させる手法を開発できれば狙った型のCNTのみを製造できることになる。磯部氏は、この点について将来の検討課題になるとしている。


発表資料

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