「海水淡水化にグラフェン使える」MITがシミュレーションで実証

このエントリーをはてなブックマークに追加
Share on Facebook

マサチューセッツ工科大学(MIT)の報告によると、グラフェンを材料とするフィルターによって海水淡水化処理(脱塩処理)が可能であるとのこと。低コストな海水淡水化システムが構築できる可能性がある。2012年6月5日付の Nano Letters に論文が掲載されている。

水分子(赤と白)だけが孔の開いたグラフェン(水色)を透過できる。ナトリウムイオン(緑)と塩素イオン(紫)は孔を通れない (Graphic: David Cohen-Tanugi)

研究チームが行ったシミュレーションでは、微小な孔の開いた単層グラフェンの膜をモデル化し、分子動力学の手法を用いて孔の口径、化学的機能化、膜にかかる水圧と脱塩能力との関係を調べた。その結果、孔の口径をちょうど1nm程度とするとき、水分子だけがグラフェン膜を透過し、塩素イオンとナトリウムイオンは透過しないようになることが分ったという。孔の口径がこれよりも大きいと塩素イオンやナトリウムイオンもグラフェン膜を通り抜けてしまうし、孔がさらに小さくなって0.7nm程度になると水分子もまったく透過できなくなる。

グラフェンに孔を空けて分子のフィルタリングに利用する研究には先行例があるが、それらはDNAなど大きな分子のフィルタリングや気体の分離などを行うためのものであり、微小な孔の口径制御という点では、脱塩用途に適合するほどの精密な制御はされていない。研究チームでは、こうした精密な口径制御を行う方法として、ヘリウムイオン衝撃や化学的エッチング、自己組織化システムなどが適していると考えている。これまでのところ、研究はコンピュータ上のシミュレーションだけだが、今夏からは試作品の作製にも取りかかるという。

今日、海水淡水化処理システムで使われている一般的な方法は、逆浸透膜(RO膜)による脱塩である。しかし、RO膜は膜厚が厚いため、水を通過させるには高い水圧をかけなければならないという問題がある。水圧を上げれば、その分エネルギーを消費することになる。

脱塩処理にグラフェン・フィルターを使うことの利点は、膜厚が炭素原子1個分しかなく、RO膜に比べて1000分の1程度の薄さであるということ。弱い水圧で水を透過させられるため、エネルギー消費が少なく、低コストなシステムにできる可能性がある。また、RO膜と同じ水圧をかければ、処理速度が数百倍高速化すると考えられる。

シミュレーションでは、グラフェンに開けた孔の端部に官能基を結合させて親水性または撥水性にした場合についても調べている。ヒドロキシル基を結合させると親水性を持つようになるため水の流量がおよそ2倍に増えるが、脱塩能力は犠牲になるといった結果が出ているという。

なお、研究チームによれば、脱塩処理用フィルターとしてグラフェンを用いる場合、その結晶品質は電子工学や光学用途で要求される程の高さは必要ないという。多少の結晶欠陥があっても、それが広がって塩を通すようにならない限りは特に問題ないとしている。


発表資料

おすすめ記事

Related Posts Plugin for WordPress, Blogger...