ブルックヘブン国立研究所、YMnO系マルチフェロイック材料の新しい機構を発見

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米ブルックヘブン国立研究所(BNL)の研究チームが、強磁性と強誘電性を併せ持ったマルチフェロイック材料の新しい機構を発見したとのこと。マルチフェロイック材料は、より高速で省電力な次世代ロジックやメモリ、センサ技術などに使用できるとされています。

YMn2O5の結晶構造。赤色が酸素原子、灰色がイットリウム原子。矢印がマンガンの磁気モーメントを表している。強誘電性分極は酸素原子とマンガン原子の間に生じる (Image courtesy of Brookhaven National Laboratory)

強磁性体は、永久磁気モーメントあるいは磁気方位(コンパスの針が常に北を指すのと似た現象)を示す材料です。強磁性体は、冷蔵庫のドアにメモ紙を張り付けたり、コンピュータのハードディスクにデータを保存したりと、日常的に様々な使われ方をしています。一方、強誘電体は、永久的な電気分極を示す材料であり、電場の印加に応答して分極方向が切り替わるという性質を持っています。強誘電体は、音波探知機や医療用イメージング、センサとしてよく使われる材料です。

「原理的には、秩序化された磁性材料と秩序化された電気材料を組み合わせることで、非常に便利なデバイスを作ることができます」と研究チームの物理学者 Stuart Wilkins氏は言っています。「例えば、電場の印加によって情報を書き込み、磁性の状態を検出することで情報を読み出すというようなデバイスが考えられます。こうしたデバイスでは、現在の技術と比較してより高速かつ省電力なデータストレージが実現されます」

しかしながら、マルチフェロイック材料(電場の印加によって極性を反転できる磁性材料)は、自然界には稀にしか存在しません。強誘電性と磁性はお互いに排斥し合う傾向があり、それらが共存する場合、二つの特性の相互作用は弱いものにとどまります。

これまでマルチフェロイック材料を説明するために使われてきたモデルの多くは、磁性材料の結晶構造に歪みを与えることで電気分極をもたらすというアイデアに基づいていました。

今回の研究成果は、電気特性と磁気特性が1つの物質内で結合される新しい仕組みを見つけたことです。研究チームはBNLが保有する国立シンクロトロン光源(NSLS)にて、極めて高輝度のX線ビームを用いて、イットリウム・マンガン・酸素から成る特定の金属酸化物を詳細に調べました。そして、磁性と電気的性質の結合が、原子の周囲に存在する外殻の電子雲に起因すると結論づけたのです。

「これまで、この機構は理論的な予想にとどまっており、その存在については多くの議論がありました」とWilkins氏。

今回の物質では、原子の結合プロセスにおいて、マンガンと酸素の電子が原子軌道を交わらせることにより、磁性と電気的性質の結合が保持されるとのこと。研究チームの測定結果は、このプロセスが物質の磁気的構造に依存していることを示しており、その物質が強誘電体になる(すなわち電気分極を持つ)ことの原因は物質の磁気的構造にあるとしています。言い換えれば、その物質の磁気的構造の変化が強誘電状態の分極方向の変化をもたらすということです。従って、このことが、その物質をマルチフェロイック材料にすると言えます。

「特に面白いのは、この結果が磁性と電気的性質を結合する新たな機構の実在を証明していること、そしてそれを研究するためのツールを与えてくれることです」とWilkins氏。

研究チームは、マルチフェロイック材料や高温超伝導体など多くの興味深い材料に関する疑問に答えを出すために設計されたNSLSの新しい機器を利用しました。この機器は、現在建設中のNSLS-Ⅱに移される予定です。
NSLS-ⅡではNSLSの1万倍の輝度のX線を作り出すことができ、材料特性の研究がより高い解像度で行えるようになるとのことです。

原文 http://1.usa.gov/oxvRVv
訳 SJN

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