コーネル大、高温超伝導体の「対称性の破れ」の理論をSTMによる実験測定で検証

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高温超伝導における対称性の破れに関する理論が、実験データとよく一致することを、コーネル大学の研究チームが実証したとのこと。高温超伝導現象の理論的解明を進める成果として注目されます。
一定の条件下では、高感度の走査型トンネル顕微鏡(STM)を用いて銅酸化物結晶を観察すると、結晶内で銅原子と酸素原子を結合している電子のエネルギー準位の分布に異常が見つかります。また、結晶全体に渡るエネルギー準位の規則的な波のような分布が途切れているところもあります。物理学者のEun-Ah Kim氏は以前の研究で、この2つの現象を関連付けるための方程式を提起していました。

(上段)理論予想から銅酸化物系超伝導体で特異点が現れるとされる領域のシミュレーション (下段)STMによって実際に観察された特異点 (Image courtesy of Cornell University)

Kim理論に基づくシミュレーションが、ビスマス・ストロンチウム・カルシウムを含む銅酸化物超伝導体のSTMによる観察結果とよく一致していることを、コーネル大学の物理学教授 J. C. Seamus Davis氏は確認しました。「どの対称性に注目すればよいかということが分かれば、対称性という観念は、物理学において強力な組織化原理をもたらしてくれます。私たちが先行研究を組み立てるときに利用したのは、2つの特殊な対称性の破れでした」とKim氏は言います。

(上段)超伝導体表面での電子測定による縞の対称性の破れ (中段)エネルギー密度のピーク位置。縞が破れている位置と一致している (下段)理論によると、こうした現象は銅-酸素結合の非対称性が平均化されている場所で起こると予想される (Image courtesy of Cornell University)

STMのプローブ先端と試料表面の間を流れる電流を測定することによって、プローブ下の電子のエネルギー状態を特定することができます。また、その状態とは原子軌道から電子が飛び出すために必要なエネルギー量であると考えることができます。高温超伝導の特性は、ある一定のエネルギー状態が消失していることであり、失われた電子は「クーパー対」と呼ばれる状態になって抵抗ゼロで移動できるようになると考えられています。

銅酸化物では、超伝導転移温度よりも高い温度であっても、このようなエネルギーギャップが見られますが、超伝導現象は起こらなくなります。このような状態は「擬ギャップ」と呼ばれており、ある種の物質では温度を室温まで上げてもなお擬ギャップが見られます。このため、擬ギャップがどのように作用するかを理解することによって、より高い温度で超伝導となるような新材料の設計方法が明らかになる可能性があるとされます。

STM画像が示しているのは、擬ギャップ条件下では電子の状態数の変化によって銅酸化物結晶全体に波のようなパターンが現れるということです。これをグラフ化するとコーデュロイ布の畝のような模様になりますが、Kim氏が「特異点」と呼んでいるものによって、このパターンの対称性はあちこちで破れており、そうした場所では、例えば1本の縞が2本に分岐したりします。数学的には、こうしたポイントでは、電子の状態数がピークに向かって小さな渦巻きのように巻きあがっていると見なされます。

擬ギャップ状態にある銅酸化物系超伝導体の酸化銅層での電子雲のグラフィック・シミュレーション。青い点が銅原子の位置。酸素原子のまわりの電子密度は銅原子の縦方向と横方向で異なっている (Image courtesy of Cornell University, Kazuhiro Fujita/Davis lab)

つい最近になって研究チームが発見したのは、銅と酸素が市松模様に配列された銅酸化物において、銅と酸素の間の電子の状態密度の差異は「東西」方向よりも「南北」方向で現れるということでした。Kim氏の理論からは、この変化量が特異点と結合することが予想されています。特異点が現れるのは、南北/東西の差異が、結晶全体での差異を平均した値に等しくなるような場所であるという理論予想が立てられ、STMでの測定結果はこの予想とよく一致しました。Kim氏によれば、多くの測定データに理論を適用して検証するために、ほぼ10年の時間を要したということです。

次の段階の研究では、こうした配置が銅酸化物の結晶薄膜層にドーピングされた原子の配列とどのように相関しているかを調べることになる、とKim氏は述べています。この研究は、それ単独で室温超伝導を実現することはないかもしれませんが、擬ギャップの作用についてより多くを解明してくれることでしょう。

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