みずほ情報総研、解析技術でMEMS設計開発を支援

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みずほ情報総研 サイエンスソリューション部では、半導体・MEMS、生命科学、エネルギー・原子力、デジタルエンジニアリング、環境資源開発、基盤技術・ツール群といった領域で、先端科学技術の研究開発を支援する解析ソフト、解析サービスの提供を行っている。本稿では、サイエンスソリューション部エレクトロニクスチーム 浅海和雄氏への取材を基に、同社が提供しているMEMS設計開発支援ソリューションの概要をまとめる。

MemsONE

MemsONEは、2004~2006年度に経産省とNEDOの委託プロジェクトで開発されたMEMS設計開発用統合システム。MEMS向けの国産シミュレーションツールとしては初めてのものであり、現在は、みずほ情報総研、数理システム、マイクロマシンセンターの3社で開発・販売を行っている。プロジェクト終了後も、データベースの整備、バージョンアップ、新機能の追加などが継続的に行われている。

MemsONEの解析機能 (出所:みずほ情報総研)

MEMSの特徴の1つは、バイオ、エレクトロニクス、機械工学など幅広い科学分野の技術が融合していること。様々な分野の研究者・設計開発者に対して、シミュレータを使った知識の補完、設計支援を行う必要性が特に強い技術領域であるといえる。このため、MemsONEは、シミュレーションツールとしても多岐にわたる分野をカバーしている。

デバイスの機構に関する解析ツールとしては、力学解析、電磁界解析、圧電解析、熱伝導解析、雰囲気流体解析、接合解析などがある。また、2種類の解析方法を組み合わせて解を導く連成解析ツールも用意されている。連成解析は、異なる種類の方程式で表される物理現象を一緒に扱う手法であり、それらを連立方程式として同時に解く場合(強連成)と、一方の方程式を解いた結果をもう一方の方程式に差し戻す逐次的プロセスを繰り返し行い、収束したところで解とする場合(弱連成)がある。MemsONEの連成解析は、力学と電界、力学と熱伝導、力学と磁界という3つの組み合わせに対応している。

X型圧電スイッチの構造 (出所:みずほ情報総研)

X型圧電スイッチの作製フロー (出所:みずほ情報総研)

X型圧電スイッチのモデル作製 (出所:みずほ情報総研)

X型圧電スイッチの解析モデル (出所:みずほ情報総研)

X型圧電スイッチの解析結果 (出所:みずほ情報総研)

プロセス解析のツールが充実しているのもMemsONEの特徴である。{100}{110}{111}など結晶面の違いから生じるエッチングレートの差を利用して3次元形状を形成する異方性エッチングに関しては、ウェットエッチングの解析用シミュレータを使うことによって実際のウェハー加工を行う前に形状の予測を行うことができる。ドライエッチングプロセスの解析では、反応性イオンエッチング(RIE)、ボッシュプロセスなどに対応したシミュレータを提供している。

ドライエッチングについては、CADで設計した物理的モデルからデバイスの形状や特性を予測する通常のシミュレータに加え、エミュレータによるマルチプロセス解析にも対応している。マルチプロセスエミュレータでは、プロセスシミュレーションに従って出力される幾何学的パラメータとしてモデルが構築される。例えば、マスクレイアウトとプロセスレシピフローを基にしたエッチング・成膜プロセスのシミュレーションを行うことによって、エッチングの3次元形状を幾何学的パラメータとして出力することができる。出力したモデルを使って、力学解析や電磁界解析、連成解析などを行うこともできる。こうした手法によって、プロセスを再現することでモデルの検証が可能になるという。

プロセスのシミュレーションでは、材料物性値と装置条件、エッチングレートなどをセットにした材料・プロセスデータベースを充実させることでシミュレーション精度を上げることができる。MemsONEプロジェクトでは、このデータベースの整備が重点的に行われ、オリンパス、オムロン、パナソニックの国内ファンドリー3社と産業技術総合研究所が保有する装置の特性がデータベース化され蓄積された。さらに、MEMS分野にはじめて携わる人を支援するために、MEMSの基礎知識から実際のプロセスでの注意点までをまとめた知識データベースも整備されている。知識データベース構築については、MemsONEプロジェクト終了後もファインMEMSやBEANSなどのMEMS関連国家プロジェクトに引き継がれており、プロジェクトを通して得られた知識データの収集・整備が続いている。

ナノインプリントの特徴的なプロセスに対応した解析ツールも用意されている。光ナノインプリントの解析では、有限差分時間領域法(FDTD法)を使って紫外線硬化樹脂内部の光強度分布を求めることにより、パターン形成プロセス時の紫外線照射による樹脂硬化特性を検証する。熱ナノインプリントの解析では、樹脂に熱をかけて軟化させ、型を押し付けてパターン転写の後、冷却によって樹脂を硬化させて離型するという一連のプロセスを一度にシミュレーションすることができる。変形量への加圧保持時間の影響を解析する際などに使われている。

MEMS回路シミュレータによる低消費電力デバイス設計 (出所:みずほ情報総研)

MEMS回路シミュレータの解析事例 (出所:みずほ情報総研)

数理システムが中心となって開発したツールとしては、プロセス逆問題解析ソフトとMEMS回路シミュレータがある。通常の順方向解析がウェハーとマスク形状を入力し、プロセスフローを経てデバイス形状を予測するのに対して、逆問題解析では最終的なデバイス形状を入力し、プロセスフローを逆にたどることで最適な加工プロセスとマスク形状を導出する。これによって、開発初期段階での試行錯誤を減らし、設計時間の短縮を図るという。

MEMS回路シミュレータは、駆動系のMEMS機構部と制御系回路を合わせたシステム全体の特性を連成解析するツールである。運動方程式と電気回路方程式を連成させて解く。適用例としては、櫛歯アクチュエータにおける印加電圧と変位の関係の解析、マイクロ共振器の周波数応答解析、平行平板アクチュエータの変位と位置検出回路の信号の時間変化の解析などがある。

3次元キャラクタリゼーション

みずほ情報総研が独自に開発しているMEMS向け解析ツールとして、2011年から提供が始まった3次元キャラクタリゼーションのサービスがある。これは、実デバイスの3次元構造計測を行い、そのデータを基にシミュレーションをかけることで、設計と実デバイスの間のギャップを埋めていくためのツールであるという。

実デバイスのデータは、X線CTを使った3次元非破壊内部構造計測によって取得する。産総研つくば東事業所内のマイクロナノ・オープンイノベーションセンター(MNOIC@TIA-NMEMS)に設置されているマイクロX線CT装置を利用した撮像サービスとシミュレーションをセットにしたサービス提供も行っている。

デバイスの動作特性が設計値と異なるが原因がよく分からないといった場合、実デバイスのデータとシミュレーションの両方を駆使して最適化を図る必要があるが、データ取得のためにデバイスを分解してしまうとデバイス形状や応力のかかり方が実際の動作時とは異なってしまう。このため同社では、非破壊での計測によってデバイス動作時と同じ状態でのデータを取り、そのデータを基にシミュレーションを行うことを提案している。これにより、問題点の把握や、デバイス特性への影響の検証などをより精確に行うことができるという。

同サービスの具体的な流れとしては、顧客が設計したCADモデルを基にシミュレーションをかけてデバイスの設計モデルを作成。これを実デバイスの3次元構造計測データから作成した計測モデルと比較する。2つのモデルの間の形状比較、電気・力学特性の比較、形状と特性の相関分析を行うことによってプロセス上の問題点などを抽出し、最適な設計指針へとつなげていくという。

3次元キャラクタリゼーション開発の一部は、東京大学先端技術研究センター 鈴木研究室の協力を得て進めている。東大先端研が主導する取り組みとしては、デバイスの開発・試作や製造段階で得た3次元構造計測データを設計段階にフィードバックする「クローズド・ループ・エンジニアリング」のためのデータ変換技術や、ボックスセル形式で粗い階段状になっているX線CT撮像データをなめらかな曲線に変換してシミュレーション用メッシュを生成するアルゴリズムの開発などがある。このアルゴリズムは、X線CT装置に内蔵したり、出力されたデータの解析ツールに組み込んだりして、シミュレーション精度の向上に使われることになるという。将来的には、X線CT装置が出力したデータを直接読み込んでメッシュ生成する機能をMemsONEに付加することも計画されている。

(取材・執筆/荒井聡)


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