スタンフォード大、太陽光で水を電気分解するソーラー電極を作製

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水を分解して酸素と水素燃料を生成するプロセスは、大規模なエネルギー貯蔵方法として、クリーンエネルギー推進派から長らく期待されてきましたが、このアイデアは技術的な難題を抱えています。今回スタンフォード大の研究チームは、その中でも最も重要な問題を解決したようです。

太陽エネルギーを本当の意味で実用化するには、太陽光を貯蔵可能な形態のエネルギーに変換し、太陽が出ていない間も使えるようにしなければなりません。水を酸素と水素に分解し、水素燃料を貯蔵するために太陽光を使うという考えは、ここ数十年間クリーンエネルギー推進派に支持されてきたものですが、困難な問題があるため実用化には至っていませんでした。しかしスタンフォード大の研究チームは、今回ついに、次世代クリーンエネルギーの実現を阻んでいる最も厄介な科学的問題を解決したといえそうです。

材料科学工学者のPaul McIntyre氏と化学者のChristopher Chidsey氏らは、シリコンを主材料とする耐久性の高いソーラー電極を発明しました。このソーラー電極は、水の分解反応につきものの激しい腐食環境に対して顕著な耐性を示すものです。

概念としては、水の分解反応はこの上なく単純です。二つの電極を水中に入れて電圧をかけると、水分子がその構成元素である酸素と水素に分解されることを、科学者は昔から知っていました。

環境性という観点からは、このプロセスは夢のようです。この電気化学反応に必要なのは水と電気だけであり、副生成物も純粋な酸素と水素だけだからです。水素はこれからの再生可能エネルギー分野に適用できるクリーンな燃料であり、事実、既知の化学燃料の中で最もクリーンなものです。

実用面での課題

「理論上では、水の電気分解はクリーンで効率的なエネルギー貯蔵機構です。しかし残念なことに、この方法には別の問題が生じてしまいます」とMcIntyre氏は言います。「現在利用できる最も手軽なソーラー電極材料はシリコンですが、水分解の副生成物である酸素に触れると、シリコンはすぐに腐食して使えなくなってしまうんです」

この問題は、1970年代から研究者たちを悩ませてきたものです。諦める者も多い中、McIntyre氏とChidsey氏は巧妙な解決法を考案しました。非常に薄い二酸化チタンの保護膜でシリコン電極をコーティングしたのです。

「二酸化チタンは、このアプリケーションにとって完璧な材料なのです」とMcIntyre氏は説明します。「それは光を透過しますし、導電性の点でも効率的であり、同時にシリコンを腐食から守ってくれます」

太陽光は二酸化チタンの保護膜を通過して光電効果のあるシリコンに届きます。シリコンは電子の流れを作り出し、電子は水中の電気化学電池内を移動します。これにより水素と酸素が分離されます。水素ガスは貯蔵可能であるため、太陽が照っていないときには水素と酸素を逆反応させて水に戻し、電気を取り出すことができるというわけです。

数十年続いた行き詰まり

これまで、他の研究者たちも電子を作り出すシリコン電極の保護を試みてきました。他の材料を試した者もいましたが、性能や耐久性などの理由から良い結果は得られませんでした。二酸化チタンを試した研究者もいましたが、やはり上手くいきませんでした。二酸化チタン層に材料的な欠陥があるため酸素が浸入してシリコンを腐食させてしまうか、あるいは二酸化チタンの膜厚が厚過ぎるために電気伝導性が損なわれるという問題があったのです。

今回の研究チームは、二酸化チタン層の膜厚を非常に薄くしつつ膜の品質を高めることが、保護性能のカギとなることを突き止めました。膜厚2nmにそろえることが、初期の二酸化チタン実験の挫折の原因になっていたピンホールやクラックをなくすのにちょうどいいことが分かったのです。

電極を腐食から保護することに成功したことに加え、彼らにはもう一つ切り札となる技術がありました。二酸化チタン層の上に、イリジウム触媒の極薄膜を加えるというものです。イリジウムが分解反応を促進し、システムの性能を向上させるのです。

広がる応用範囲

研究チームは耐久性に関する比較実験を行ったところ、保護膜のない試料では腐食が起こり、30分未満で使い物にならなくなりましたが、二酸化チタンの保護膜を施した試料では8時間の実験中に腐食はみられず、反応効率の低下も起こらないという結果を得ました。

研究チームが注目したのは、これが他の半導体基板でも上手く機能し、また他の触媒と組み合わせることもできる十分に一般的なアプローチであり、性能を最大化するために電極のファインチューニングが可能だということでした。さらに、精密で無欠陥な成膜を可能にした原子層蒸着(ALD)という技術は、今日の半導体産業で広く用いられているものです。従って、量産を行う上でも優れた技術といえます。もう一つ、今回の研究成果は表面のテクスチャ処理など他の効率強化技術は使わずに達成されたものであり、これらの強化技術を使うことでさらなる性能向上が可能になるという点も注目されます。

「この技術の可能性にとてもワクワクしています」McIntyre氏は言います。「電極そのものについてだけでなく、その製造プロセスについてもです」

彼らの成功によって、私たちは次世代のクリーンエネルギーの実用化に一歩近づくことになるでしょう。

原文 ANDREW MYERS http://bit.ly/m1gk9p
訳出 SJN

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