ミネソタ大の研究チームが、熱を電気に直接変換する新しい合金材料を開発したとのこと。まだ研究の初期段階ですが、廃熱を利用した環境親和性の高い発電に対して広範囲にわたる影響を与える可能性があるとしています。
▲熱せられた材料が突然磁性を発現する様子
研究チームによれば、この材料を使って自動車の排気孔から出る熱を電気に変換し、ハイブリッド車の電池を充電することも可能だろう、とのことです。その他、将来的な用途としては、工場・発電所からの廃熱や海水の温度差を利用した発電などもあるでしょう。研究チームは現在、この技術の商用化の可能性を探っているところです。
「この研究は非常に有望であると言えます。それは、これまでなかった全く新しいエネルギー変換方法を提示しているからです」と、研究チームのリーダーでミネソタ大学宇宙工学・力学教授のRichard James氏は述べています。「それはまた、究極的にグリーンな発電方法でもあります。廃熱を使って発電するため、二酸化炭素がまったく発生しないからです」
この材料を生みだすために、研究チームはいくつかの元素を組み合わせ、Ni45Co5Mn40Sn10という新規の強磁性合金を作りました。強磁性体は、通常ではありえない弾性と磁性と電気特性を併せ持った材料です。Ni45Co5Mn40Sn10合金では、ある固体が別の固体へと変化する可逆性の高い相転移の下で強磁性が現れます。この相転移の間に起こる合金の磁気特性の変化を、エネルギー変換デバイスとして利用するのです。
ミネソタ大の研究室での小規模の実証実験中、この新材料は最初磁性のない状態から始まり、その後わずかに温度が上昇すると突然、強い磁性を示すようになります。この現象が起こると材料は熱を吸収し、同時に周囲のコイルで電気を作り出します。そして、ある量の熱は、ヒステリシスと呼ばれるプロセスの中で失われます。今回の研究チームの重要な発見は、相転移におけるヒステリシスを最小化するシステマティックな方法を見つけた点にあるといいます。
コンピュータの廃熱を電気に変換することなどをめざして、材料を薄膜化する研究も、他分野の研究者と共同で進められています。「この研究は科学と工学の全領域を横断するものなんです」とJames氏は言います。「工学、物理学、材料科学、化学、数学などなど、多くの分野が含まれます。新しい方法を創り出すために、本学の科学工学部全体の協力が必要でした」
より詳しい研究内容は、Advanced Energy Materialsの掲載論文をご覧ください。
http://z.umn.edu/energyalloy
原文 http://bit.ly/lGNqEm
訳出 SJN
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