アルバック、TSV形成などで高い技術力発揮。MEMSファンドリー事業とプロセス開発の最新動向

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アルバックは、製造装置の開発・製造をはじめ、計測分析機器事業、材料事業、各種受託サービスなどの領域で事業を展開。その製品応用分野は、電子デバイス、エネルギー・環境、医薬品・食品・バイオ、宇宙航空、先端材料、次世代サイエンスなど幅広い範囲に及んでいる。同社のMEMS事業の最新動向について、技術開発部 MEMS/真空計測研究部 部長の不破耕氏を取材した。

MEMSファンドリー事業の概要

圧力センサ製作事例(出所:アルバック)

シリコン深堀加工例(出所:アルバック)

アルバック MEMS/真空計測研究部では、MEMS関連の製造プロセス技術とセンサなどの各種デバイス試作開発を進めており、その技術を使ったMEMSファンドリーサービスの提供も行っている。顧客から受注する案件の大半は、研究開発用途のデバイス試作。不破氏によれば、ファンドリーは「一種のアンテナショップ」であり、まだ量産化されていない研究開発段階のデバイスを受注することによって、メーカーの次世代技術の動向や装置ニーズをつかむ狙いがある。最終的には、これらを新しい装置の開発・販売につなげていくのが事業目的であるとする。

ファンドリー事業は2003年に開始した。MEMSデバイス製造に必要な各種装置を揃え、顧客から受注したデバイスの作製を行っている。現在の装置構成をまとめると、スパッタリング装置、プラズマCVD装置、蒸着装置などの各種成膜装置をはじめ、ドライエッチング装置、洗浄用アッシング装置などの自社装置を完備。また、自社での製品開発を行っていないリソグラフィ関連についても、300mmウェハー対応アライナー1台、両面アライナー1台、4インチ/5インチウェハー対応アライナー1台、2~8インチウェハー対応i線ステッパー1台、合計4台の露光装置を設置している。

TSV関連のデバイス試作が増加

最近のトピックスともいえるのが、TSV(Through Silicon Via: シリコン貫通電極)関連の試作であるという。同社ファンドリーでは、主にビアラスト工法でのTSV試作依頼が多い。ビアラストによるプロセスでは、ウェハー上へのデバイス形成後ウェハーを薄化してから、配線工程で電極用の貫通孔を開ける(これに対して、ウェハーへのデバイス形成時に貫通孔も一緒に開けておくのがビアファースト)。

TSV形成の技術課題としては、従来のボッシュプロセスを使った場合に生じる貫通孔側壁のギザギザ構造(スキャロッピング)をいかになくすかという問題がある。貫通孔を開けた後、側壁に絶縁膜やめっきシード層を形成するプロセスがあるが、このときスキャロッピングがあると、成膜した絶縁膜が剥がれやすくなってしまう。また、スキャロッピングの凹凸付近では膜の付きまわりが変化するため、膜厚の薄い部分に電界集中が起こり、絶縁破壊を招き易くなるという。

こうした問題を解消するため、同社のエッチング装置では、スキャロッピングをなくして平滑な側壁を形成する技術が導入されている。また、プラズマCVD装置による絶縁膜の付きまわりを良くする技術、SiO2膜のエッチングを利用したビアのボトム抜き、高アスペクトの貫通孔に対して良好なシード層を形成するスパッタリングなどについても、独自のプロセス技術を保有している。

TSV用成膜装置では、300mmウェハーへの移行に対応したプロセス技術の確立が課題となっている。アルバックだけで技術開発を行うのではなく、デバイスメーカー側での試作・評価の結果をプロセス開発にフィードバックするというかたちで、デバイスメーカーとの協力が欠かせないという。

300mmウェハーでのTSV形成について、不破氏は「基板の冷却が非常に重要になる」と指摘している。これは、50~100μmあるいはそれ以下まで薄化したウェハーをガラス基板に張り合わせてハンドリングする際に、ガラスが絶縁体であることから静電チャックによるウェハーの固定がしにくくなることと関係がある。静電チャックが働きにくいため、熱の伝わり方が悪くなり、フォトレジストが熱で焼かれるといった問題が生じているのだという。

MEMSプロセス技術の特徴

ロングスロースパッタ装置 セラウスZ-1000(出所:アルバック)

アスペクト比の高いMEMS構造に対するプロセス技術の特徴の1つとして、プラズマ生成時にバイアス電圧をかけたり、磁場の重畳を行うことによって、成膜の指向性を高める方法がある。異方性エッチングでは、誘導結合プラズマ(Inductively Coupled Plasma)で放電する通常のICPエッチング装置の外側にコイルを上中下3段に巻くNLD(Neutral Loop Discharge)というプラズマ生成法が用いられることがある。

この方法は、上下のコイルと中央のコイルで電流の方向を逆にすることによって、中央コイル内側のチャンバ内部の空間に磁気中性線(磁場ゼロのループ状の領域)を作り出すというもの。磁気中性線上に電場の勾配ができるため、高密度に集中したドーナツ型のプラズマ(NLDプラズマ)が発生するという。NLDプラズマは電子温度が低く、レジストに対する選択比が非常に高いという特徴がある。プラズマ密度が高いため、スパッタ的なイオンエッチングで特に効果を発揮するという。また、コイルに流す電流を制御することによって、ドーナツの輪を広げたり縮めたりしてNLDプラズマを動かすこともできるため、エッチング時の面内均一性も向上する。NLDプラズマ自体は、同社が1990年代に開発した技術であるが、最近の高アスペクト構造の形成に利用できることが分ったことで、再び脚光を浴びている。

スパッタリングでの粒子の直進性を上げる技術としては、ロングスロースパッタリングと呼ばれる方法がある。これは、プラズマ生成用のアルゴンガスの圧力を低圧化し、基板とスパッタリングターゲットの間の距離を長く取ってあげるというもの。プラズマが低圧化することで、飛行中のイオンの散乱・衝突が抑えられ、直進性が向上する。また飛行距離を長く取ることによって、直進方向以外の曲がったベクトルを持ったスパッタ粒子が基板に到達しなくなるので、やはり直進性が向上する。プラズマに電場をかけることでさらに直進性を持つイオンだけを抽出し、他は排除する場合もある。このようにスパッタリングの直進性を上げることによって、深い位置にあるビア形成なども良好に行えるようになると考えられる。

MEMSデバイスの試作・開発動向

石英ガラス加工例(出所:アルバック)

同社独自のMEMSプロセス技術としては、圧電効果のある強誘電体PZTを薄膜プロセスで成膜し、加速度センサやジャイロスコープ、ガルバノミラーなどのデバイスを形成する技術も注目される。下部電極、PZT、上部電極をすべてドライプロセスで形成することができる。圧電素子の場合、膜厚は薄すぎると力が出ないため、厚膜成膜の技術が不可欠であるとのこと。

加速度センサでは、ビーム部にかかる負荷(圧)を電圧に変換して加速度を測るための圧電素子としてPZT薄膜が使われる。ガルバノミラーでは、複数のPZT薄膜の圧電体を使ってミラーを支持し、電圧によって圧電体に歪みを生じさせることでミラーの微細な動きを制御することができる。こうしたミラーデバイスは、携帯電話に内蔵するピコプロジェクターなどで使われるようになっている。

バイオMEMS分野では、ガラスや石英基板上へのマイクロ流路の形成なども行っている。流路に試料を流しながら光を照射し、光に対する試料の応答などを観察するため、デバイスの材料としてはガラスや石英など透明性の高いものが求められる。流路形成には、ドライエッチングを用いる。ウェットエッチングでは実現が難しい加工角度の精密な制御や垂直構造の形成なども、同社のドライエッチング技術で可能になっている。

研究開発用途でのデバイス試作では、条件を振った様々な構造のデバイスを1枚のウェハー上に形成することも多い。デバイスの構造が変わると、エッチングされる面積が変わり、エッチングレートや膜の付き方もデバイスごとに変化するが、あらかじめ条件出ししておくことで、異なる構造のデバイスでも一括で形成することができるようになっている。こうした試作サービスが提供できるのは、プロセス制御に精通した装置メーカーならではの技術力の表れであるといえる。

MEMS向け製造装置のラインナップ

PE-CVD装置 CC-200(出所:アルバック)

NE-550 シリコン深堀加工(出所:アルバック)

同社のMEMS向け製造装置ラインナップの概要をまとめる。

スパッタリング装置には、200mmウェハー対応の「SME-200E」「CS-200」などがある。PZT、BST、AlN、SiNx、Al2O3など各種絶縁膜材料にも対応している。

プラズマCVD装置には、「CME-200E」「CC-200」などがある。基板ホルダーサイズは250×250mm。27.12MHzの高周波プラズマ源による高密度プラズマプロセスを行える。

蒸着装置「ei-5」は、3000台超の販売実績がある。EB(電子線)、RH(抵抗加熱)、EB+RHなど多様な蒸着方法に対応。基板ホルダーは、リフトオフ、プラネタリー、サテライトの各方式に適合している。Ni/Au半透明電極やITOの蒸着プロセスにも使用できる。

エッチング装置には、「NE-550」「HSI-5700」「NLD-5700」などがある。「NE-550」は、アルバックが独自開発した磁場アシスト方式の有磁場ICP(ISM:Inductive Super Magnetron)プラズマ源を使用。200mmウェハーに対応し、PZT、SBT、BST、白金、イリジウム、金属、磁性体、ポリイミドなど様々な材料のエッチングができる。「HSI-5700」は、シリコンの高速ドライエッチングが可能な反応性イオンエッチング(RIE)装置。TSV形成用途に適している。「NLD-5700」は、磁気中性線プラズマを利用した200mmウェハー対応のディープエッチング装置。石英、パイレックス、水晶、ニオブ酸リチウム/タンタル酸リチウム(LN/LT)系強誘電材料などのエッチングにも使用できる。

アッシング装置「NA-8000」は、マイクロ波を使ったダメージのない灰化処理が可能。定期保守6か月ごとで、チャンバクリーニング時間30分程度とメンテナンスが容易なことも特徴となっている。

(取材・執筆/荒井聡)


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