酸化グラファイトからのグラフェン作製、IPC PASらが新手法開発

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ポーランド科学アカデミー物理化学研究所(IPC PAS)と仏リールのInterdisciplinary Research Institute(IRI)が、酸化グラファイトから多層グラフェンを生成する新しい手法を開発したとのこと。CVD装置やPVD装置といった特殊な装置や複雑なプロセスを使わないのが特徴であり、唯一使用する器具は超音波洗浄器であるという。Chemical Communications に論文が掲載されている。

左上は酸化グラフェンシート、右下はTTFが表面に付着したグラフェン (Credit: IPC PAS, Piotr Gdziorowski)

グラファイトは、多数のグラフェンシートが積層してバルク状になった材料であるが、通常はシート間の相互作用が強いため剥離することができない。相互作用を弱めるためにはグラファイトを酸化させる必要があり、これにはハマーズ法が使われる。
今回開発された方法では、ハマーズ法によって得た酸化グラファイトの粉末を水に分散させ、超音波洗浄器の中に置く。それまでくっついていた酸化グラフェンのシート同士が、超音波の働きによって剥離し、300nm程度の大きさの酸化グラフェンフレークを含有するコロイドを得ることができる。
しかし、このままでは酸素を多く含みすぎているため、グラフェン固有の物理化学特性が損なわれてしまうという問題がある。そこで研究チームは、グラフェンフレークから酸素を除去するために、酸化グラフェンの炭素環とテトラチアフルバレン(TTF: Tetrathiafulvalene)の原子環との間の共有結合を持たないπ‐πスタッキング相互作用を利用することを考えた。

TTF分子は、2つの原子環で構成されており、各環はそれぞれ3個の炭素原子と2個の硫黄原子から出来ている。研究チームの報告によると、酸化グラフェンとTTFを混合し、超音波洗浄器に投入するだけで、酸化グラフェンが還元されてグラフェンとなり、同時にTTFが酸化されるという。

その結果、グラフェンフレークにTTF分子が挿入された状態の複合体を得ることができる。この複合体の溶液を電極上に成膜して乾燥させると、グラフェンフレークが電極表面に平滑なコーティングを形成する。このコーティングは、数十層から数百層のグラフェンシートとTTF分子が交互に積層されたもので、100~500nmで膜厚の制御が可能。最後に、適切に選ばれた化合物とTTFをシンプルに化学反応させると、コーティングからTTFを取り除くことができるという。


発表資料

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