MIT、近赤外光で発電できるカーボン太陽電池を開発

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マサチューセッツ工科大学(MIT)が、炭素材料だけで光電変換層を構成するカーボン太陽電池を開発したとのこと。太陽光に含まれる近赤外光はエネルギーが低く、従来のシリコン太陽電池では電気に変換することができなかった。地上に到達する太陽光の波長のうち40%程度は近赤外の領域にあるため、これを発電に使えるようになれば、太陽光エネルギーの有効利用拡大につながると考えられる。2012年6月28日付のAdvanced Materialsに論文が掲載される。

シリコン表面に成膜された単層CNTの原子間力顕微鏡画像 (Photo: Rishabh Jain et al)

今回のカーボン太陽電池は、カーボンナノチューブ(CNT)とフラーレンC60だけで構成されている。CNTを使った太陽電池はこれまでにも報告があるが、CNTの支持体として、またCNTの光電変換によって生成された電子を電気エネルギーとして取り出すために、高分子層が使われていた。このため製造プロセスが複雑になり、高分子層が空気に曝されて劣化するのを防ぐための特殊なコーティングも必要だった。これに対して、炭素材料だけでできている今回のカーボン太陽電池は空気中でも安定であるという。

カーボン太陽電池が可能になった理由の1つとして、ここ数年でCNTの高純度化技術が進展したことが上げられる。研究チームのメンバー Rishabh Jain氏へのメール取材によると、今回のカーボン太陽電池で使われているCNTはすべて半導体型の単層CNTであり、さらにCNTの巻き方についても、電子的特性が同じになる2つの対称的な巻き方(右巻きと左巻き)のうち、どちらか一方に揃えた状態で巻かれているという。

異なる巻き方が入り混じったヘテロジニアスなCNTや、単層CNTと多層CNTが混在した材料では変換効率が上がらないか、太陽電池としてまったく機能しないことが分っている。CNTの組成を均質(ホモジニアス)にすることで、光電変換機能を持つカーボン太陽電池が可能になったと考えられる。

カーボン太陽電池と従来のシリコン太陽電池を積層したタンデム構造にすることで、太陽光に含まれるほとんどすべての波長の光を電気エネルギーに変えることができるようになる。CNTの光吸収性が極めて高いため、太陽電池の作製に使われる高純度CNTは比較的少量で済み、完成品を非常に軽量化することができる。

カーボン太陽電池の変換効率は現状では0.1%と低く、コンセプトを実証した段階にとどまっているが、変換効率を上げていくための開発方針はすでに分っているとのこと。研究チームでは現在、カーボン層の形状や膜厚をより精密に制御する方法などを研究しているという。他の研究グループにも協力を呼びかけ、変換効率の向上をめざすとしている。

ただし、チームリーダーのMIT 化学教授 Michael Strano氏は、既存の太陽電池で使われていない近赤外領域の波長を利用できることから、変換効率の低い現状のカーボン太陽電池であっても低コストであるかぎり利用価値はあると指摘している。


発表資料

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「MIT、近赤外光で発電できるカーボン太陽電池を開発」への1件のフィードバック

  1. 性能の良い物が安く大量に作れれば、壁材等に使って、発電しながら冷房できるかもね。

    夏場の電力不足の主な原因は冷房に関わるものだし、インド等の赤道に近い国々の発達に伴うエネルギー不足を補う観点からも、重要な進歩だと思う。

    あと太陽電池パネルの裏や、エンジン等の熱源も利用できそう。

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