「長さ1メートルのCNT作れる」ライス大らが報告。位相欠陥の修復機構をシミュレーションで解明

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米国ライス大学と中国の香港理工大学、清華大学の共同チームが、カーボンナノチューブ(CNT)の自己修復能力に関する研究を行っている。それによると、温度条件や触媒を適切に設定することで、CNTは最大1mの長さまで無欠陥で結晶成長することができるという計算結果が得られたという。2012年6月15日発行のPhysical Review Lettersに論文が掲載されている。

鉄触媒の近傍ではCNTの欠陥が非常に素早く修復されることが計算によって示された (Credit: Feng Ding/Rice/Hong Kong Polytechnic)

研究チームは今回、CNTの位相欠陥を修復する作用のある触媒について調査。その結果、もっとも効率よく修復が行える触媒は「鉄」であることをつきとめたとする。CNTの位相欠陥とは、通常6個の炭素原子が結合して形成される結晶の環の一部が炭素原子5個または7個などになっている欠陥であり、CNT形成時には不可避的に発生するもの。これがあると、CNTの優れた電子的・物理的特性に影響が出るが、温度条件などの要素の組み合わせを適切に行うことによって炭素原子の誤った配置は動力学的に修正され、エネルギー的に安定した六角形の構造に戻るという。研究チームは、CNTの変形に必要なエネルギーについて、密度汎関数理論(DFT: density functional theory)を用いて分析している。

最適化された条件化で五角形や七角形の位相欠陥が発生する確率は、わずか100億分の1であるという。鶏舎用の金網のような形状のCNTにおいて、それぞれの炭素原子がどんな位置を取るのかは、各原子に関連付けられたエネルギーによって決まる、とライス大 材料科学・機械工学・化学教授 Boris Yakobson氏は説明する。ただし、成長中のCNTと触媒の界面で実際に何が起こっているのかについては、研究者の間で長い議論が続いてきた。

Yakobson氏によれば、この議論には2つの仮説が存在しているという。よく知られた仮説の1つは、頻繁に生じる欠陥がCNTの内部に入り込み、熱の作用で修正されるとするもの。これについては、何種類かの修正プロセスがあるとされる。その一方で、欠陥というものは基本的にまったく生じないのだとする仮説もある。こちらの仮説は確かに奇妙な感じがする話ではある。

Yakobson氏は、どちらの仮説についても、これまでは定量的分析を伴わない単なる言葉の上での議論だったと指摘。今回の研究の意義は、この問題について最先端の計算による定量的な評価を行っているところにあるとする。特に、1番目の仮説に出てきた熱による修正(アニーリング)について、位置に依存してどの程度の速度で起こるかを分析している点が重要であるという。

炉の内部では、触媒部位に炭素原子が1個ずつ加えられ、CNTが成長していく。これは高い塔のてっぺんが最初にできて、後から土台の部分にレンガが付け加わって塔がニョキニョキのびていくような感じだが、数分間に数百万個というすごい速さでレンガが付け加わっていくため、間違いが起こり、構造に変化が生じることになる。

理論上、炭素原子5個の環が単独で生じる場合には、その後に続く原子の配列にも歪みが出て、チューブは円錐形に変形すると考えられる。炭素原子7個の環が単独で生じる場合には、チューブはホルン型の末広がりな形に変形する。

しかし、今回行われた計算は、こうした単独での欠陥がCNTの壁に生じることはないという結果も示している。計算では、炭素原子5個の欠陥と7個の欠陥が常にペアになって生じるとされる。これが素早く欠陥の修復が行われる理由である。7個の環から5個の環へと原子1個が移動することで、両方の環が通常の炭素原子6個の環に変わると考えられる。

研究チームは、こうした原子の移動による欠陥修復が最も起こりやすくなるのが絶対温度930K付近であることも明らかにした。また、CNTの成長で通常使われる3種類の触媒、ニッケル・コバルト・鉄の中で、この温度条件での修復に適しているのは鉄であるとしている。

成長中のCNTと触媒の界面において原子5個と7個のペアが形成されると、非常に素早く修復が起こるとされる。より新しい原子がCNTの壁に欠陥を押し込むにつれて、修復は起こりにくくなり、触媒から4原子以上離れると欠陥は固定される。

CNTを成長させる条件を厳しく制御することによって、素早い自己修復が促されると考えられる。原子配列のエラーは、CNTの壁の一部になる前に瞬間的に修復される。研究チームは、CNTの成長速度が遅くなるにつれて、より長い無欠陥CNTが成長することもシミュレーションで確認。700Kの温度下で毎秒1μm程度成長するCNTが、長さ1mに達する可能性があることも分ったという。


発表資料

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