MIT、太陽電池のシリコン使用量90%削減。セル表面に逆ピラミッド型のナノ構造形成

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マサチューセッツ工科大学(MIT)が、結晶シリコン太陽電池のシリコン層の厚さを90%以上削減できる技術を開発したとのこと。セル表面にナノスケールの逆ピラミッド型の構造を形成することにより、従来型太陽電池と比べてシリコン層を非常に薄くした場合でも、変換効率が落ちなくなるという。2012年5月21日付の Nano Letters オンライン版に論文が掲載されている。

シリコン表面の逆ピラミッド型テクスチャを上から見たところ (Image: Anastassios Mavrokefalos)

太陽電池セル表面に微小なシリコン・ナノワイヤの森のような構造を作るなど、光子をより多く捕獲するための技術については、これまでにも様々な方法が検討されてきた。しかし、ほとんどの場合、セルの表面積が増えることで光電変換された電子が表面で再結合してしまう確率が上がるため、電流として太陽電池の外に取り出せるエネルギーが増えないという問題があった。

今回の研究では、この問題を回避するために、光吸収量の増分に対してセル表面積がそれ程増えないようにするというアプローチが取られている。具体的には、研究チームが「逆ナノピラミッド」とよぶギザギザ型の構造を表面に施すことによって、光吸収量を大幅に増加させつつ、表面積は70%程度の増加にとどめることで、表面での電子の再結合を抑制している。この方法に用いると、厚さ10μmの結晶シリコン太陽電池のシートでも、その30倍の厚さがある従来型シリコンウェハーと同程度の効率での光の吸収が可能になるという。

論文の筆頭執筆者 Anastassios Mavrokefalos氏によれば、この方法は高価な太陽電池用高純度シリコンの使用量を減らせるだけでなく、セルの重量が軽くなることでフレームや支持用の材料を減らす効果もある。このため、セルの材料コストだけでなく、太陽電池の設置コストも低減できる可能性がある。さらに、今回開発された技術は既存のシリコンチップの標準製造プロセスを利用できるため、新たな製造装置や化学薬品を用意する必要がないという利点もあるという。

パターン形成されたシリコンウェハー断面のSEM画像。ピラミッド状のギザギザがついているのがわかる (Image: Anastassios Mavrokefalos)

逆ピラミッド構造の形成には、大面積の加工にも拡張可能な二重レーザービームによる干渉リソグラフィ技術が用いられている。シリコン表面に堆積させたフォトレジストにレーザービームを使って極めて微小な孔を開ける。次に、いくつかの中間プロセスを経てから、フォトレジストで覆われていない部分を水酸化カリウムの薬液で除去する。このエッチングプロセスによって、望んだ形状のピラミッド型をシリコン表面に形成することができる。

現時点で研究チームが行っているのは、シリコンウェハー表面にパターンを形成し、光取り込み性能の向上を実証するところまでであり、これは新型太陽電池の作製に向けた第1段階に過ぎないという。次の段階では、実際の太陽電池セルを製造するための要素を加え、従来型の太陽電池と同レベルの変換効率を実証することが課題となる。予想では、現在の商用太陽電池セルの最高変換効率24%に対して、新アプローチによる変換効率は20%程度になると考えられているが、これは今後実際に確かめる必要があるとする。

MIT 電力工学教授の Gang Chen氏は、うまくいけば近い将来このシステムを商用製品化することができるだろうと話す。Chen氏によれば、今回の逆ピラミッド型は非常に多くの多様な表面形状についてコンピュータ・シミュレーションをかけた後に開発されたものであり、性能を最大限に向上できる配置であることが分っているという。

スタンフォード大学 材料科学准教授の Yi Cui氏は、今回の研究について「非常にエキサイティングな成果。実用面で顕著な影響力を持つ可能性がある。薄型セルを実用化するための光子マネジメントを行う有効な構造が得られるからだ」とコメント。光子を効率よく吸収できる薄型シリコンセルの開発は、太陽電池の低コスト化のために重要であると話している。


発表資料

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