ユタ大、放射線浴びても壊れないMEMS型ロジック回路を開発

このエントリーをはてなブックマークに追加
Share on Facebook

米国ユタ大学の研究チームが、強い放射線に暴露しても壊れないMEMS型ロジック回路を開発したとのこと。MEMS技術を用いた機械的な電極の開閉によってロジックゲートでの電流オン・オフ制御を行うため、放射線に起因する半導体の動作不良で演算できなくなるトラブルを回避できるという。宇宙環境、原発事故現場、核攻撃時などのロボット操作への応用が期待される。2012年5月19日付の Sensors and Actuators オンライン版に論文が掲載されている。

MEMSロジックゲートの顕微鏡画像。上段は「排他的OR」、下段は「AND」の論理演算を行っている (Photo Credit: Massood Tabib-Azar, University of Utah)

放射線に暴露すると半導体の内部に電流が流れ、信号処理に必要な電流制御ができなくなる。電子デバイスに耐放射線性能を付与する技術は、大きく分けて2つある。1つは、半導体のチャネルを鉛などの放射線遮蔽材料でシールドする方法。もう1つは、もともと放射線耐性のある材料をデバイスに使用する方法である。

MEMS技術を使った物理的なスイッチングで電流を制御すれば、半導体チャネルが存在しないため放射線の影響を受けずに済む。ただし、MEMSによるスイッチと比べると、半導体チャネルのほうが1000倍は高速に動作し、微細化が可能で、可動部がないために信頼性が高まるという利点がある。このため、MEMSを利用した耐放射線回路は従来検討されてこなかったと研究チームのTabib-Azar氏は説明する。

耐放射線ロジックゲートで構成したMEMS回路。上段は2ビットのマルチプレクサ、中段は1ビットの全加算器、下段は2ビットの全加算器 (Photo Credit: Massood Tabib-Azar, University of Utah)

これに対して、個別のMEMSスイッチを複数使うかわりに、1個のMEMSデバイスを1個のロジックゲートとして機能させるというのが、今回の研究チームのアプローチとなっている。こうすることで、コンピュータ1台に必要とされるデバイスの数を1/10に減らすことができ、信頼性と動作速度も上がるとする。

開発されたMEMSロジックゲートは、”AND”や”NOT”といった論理操作を行うことができるもので、各ゲートがそれぞれ6~14個のシリコン製スイッチで構成されている。ゲート1個の寸法は25×25μm程度で、厚さは0.5μm。電圧1.5Vで動作するという。従来の機械的スイッチの動作電圧10~20Vと比べると、非常に小さな電圧で駆動できることになる。

各ロジックゲートには、2つの「ブリッジ」がある。ブリッジは、微小な顕微鏡用スライドガラスが2枚交差して「三目並べ」のパターンを作っているように見え、三目並べの中央のマスにはタングステン電極が設けられている。各ブリッジは、ガラスライクな窒化シリコンの絶縁体とその下にある多結晶シリコンで構成されている。絶縁体はエッチングされ、細長いタングステン電極でカバーされる。ここでブリッジに電荷をかけると、ブリッジ同士が引き寄せ合って接触し、電流が流れるという。

研究チームが、このMEMSロジックゲートと従来のシリコン半導体型スイッチをテストしたところ、MEMSロジックゲートは高熱・強放射線環境下でもオン・オフ動作を繰り返し行うことができた。一方、シリコンスイッチのほうは数分でショートしたという。

テストは、真空チャンバ内のホットプレートにデバイスを置き、1時間、華氏277度に昇温するというもの。また、学内にある90kW級の実験用原子炉の中心部に2時間×3回にわたってデバイスを下ろすテストも行われたが、いずれの場合も故障は見られなかったとのこと。さらに、通常の環境下における2か月以上10億サイクルの動作試験でも故障しないことが確認されている。Tabib-Azar氏は、実用化に向けて信頼性をさらに100万倍高めたいとしている。


発表資料

おすすめ記事

Related Posts Plugin for WordPress, Blogger...