スタンフォード大ら、多層CNTの触媒活性を高める方法を発見。白金触媒代替材料に期待

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スタンフォード大学らの研究チームが、多層カーボンナノチューブ(CNT)の触媒活性について新たな知見を報告。それによると、多層CNTの外側の層が一部ちぎれて微小なグラフェン状の構造を形成することによって、触媒活性が高くなるとのこと。燃料電池やリチウム空気電池で使われている白金触媒の代替材料になる可能性があるという。2012年5月27日付の「ネイチャー・ナノテクノロジー」オンライン版に論文が掲載されている。

損傷したCNT外層にみられるグラフェン状のパッチ(白色)が、鉄(黄色)と窒素(赤)で構成された触媒部位の形成を促進する。触媒は酸素の還元を促し、水が生成される (出所:スタンフォード大学)

今回の研究で使用されたのは、2~3層のCNTが同心の入れ子構造となった多層CNT。外側のCNTを細かくちぎり、内側は無傷のままにしておくことで、CNTの導電性を損なうことなく触媒活性を高めることができるとする。「通常のCNTにはほとんど欠陥がないが、触媒部位の形成を促して触媒活性を高める上では欠陥の存在が重要」と論文の筆頭執筆者 Yanguang Li氏は指摘している。

Li氏らは、化学溶液中で処理した多層CNTを顕微鏡観察。この処理によって外側CNTの一部がやぶけてナノサイズのグラフェンとなり、ほぼ無傷なままの内側のCNTに張りついた状態となっていることを確認したとする。

この状態の多層CNTに微量の鉄と窒素の不純物を添加すると、触媒反応の活性が非常に高くなるという。一方、内側のCNTが無欠陥のままであるため、電子の移動が妨げられることもないとしている。単層CNTを使った場合には、CNTの損傷部によって導電性が低下するため、この利点は得られないと考えられる。

燃料電池や金属空気電池(リチウム空気電池や亜鉛空気電池など)では、水素と酸素を水に変換する化学反応の速度を上げるために白金触媒が使われているが、今回の多層CNTは白金に非常に近い触媒活性を持っているという。白金は、過去5年間の取引価格が1オンス800~2200ドル超というように高価な材料であるため、CNTでこれを代替できるようになれば、電池の低コスト化につながることが期待できる。

研究チームは最近、実験で得たCNT触媒のサンプルをテストするために、燃料電池の専門家の元へ送ったとのこと。「研究の目標は、エネルギー密度が非常に高く、長時間作動する燃料電池をつくることにある」とLi氏は話す。金属空気電池に使われている白金やパラジウムその他の貴金属触媒も、CNT触媒で代替できる可能性がある。

オークリッジで撮像されたCNTの電子顕微鏡画像。赤い丸で囲まれているのが鉄原子 (出所:オークリッジ国立研究所)

今回の研究は、酸素反応が起こる触媒活性部位の化学的構造に関する長年の議論に答えを出すことになるかもしれないという。Li氏によれば、一方のグループは「活性部位で鉄の不純物が窒素と結合している」と考え、他方のグループは「活性部位を構成するのは窒素だけであり、鉄は活性部位の働きを促進するだけ」と考えているとのこと。

研究チームはこの議論に答えを出すために、オークリッジ国立研究所の協力を得て、CNTの原子スケールでの画像化と分光分析を実施。その結果は、鉄原子と窒素原子が非常に近接して存在していることを証拠立てるものだったという。

スタンフォード大の化学教授 Hongjie Dai氏は「この種の触媒で個々の原子のイメージングを行ったのは、今回が初めて」と話す。「すべての画像は鉄原子と窒素原子が近接していることを示しており、2つの元素が結合していることを示唆している。このような画像化は、グラフェンが原子1個分の厚さしかないために可能になっている」

Dai氏は、活性部位に豊富に存在している鉄の不純物が、実験者によって意図的に加えられたものではなく、CNT作製時に使われたメタルシードに由来するものであると指摘。CNTにおける金属不純物は無視できないものであり、偶然に混入した鉄が貴重な研究成果につながったとしている。


発表資料

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