NIST、ケーキ型の長尺CNTアレイを開発。テラヘルツレーザー出力測定器のコーティング材に利用

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テラヘルツ波は、プラスチック、布、紙、生体組織など多くの物質を貫通できるため、隠し持たれた武器の探知やパッケージ検査、皮膚腫瘍のイメージングなどへの応用が期待されています。しかし、今までのところ、テラヘルツレーザーの絶対出力を測定する標準化された方法はありません。今回、米国標準技術局(NIST)の研究チームは、周密に配列された非常に長いカーボンナノチューブ(CNT)が長波長領域のほとんど全ての光を吸収することを発見しました。これは、テラヘルツレーザー出力測定用検知器のプロトタイプ向けのコーティング材としてCNTが有望な材料であることを示すものです。

シリコン上に成長したカップケーキ型のVANTA。カミソリの刃でスライスでき、刃をヘラのように使って検出器上部に移すことができる。非常に黒いナノチューブのコーティングがテラヘルツレーザー光を吸収する (Credit: Lehman/NIST)

この研究は、テラヘルツ領域で動作する波長100μmの遠赤外から波長1mmのマイクロ波までのレーザーを調整するための参照基準の開発の一環として実施されています。

今回開発された垂直配向カーボンナノチューブ配列(VANTA: Vertically Aligned Carbon Nanotube Array)と呼ばれるコーティング材は、いくつかの望ましい特性を備えています。まず、ハンドリングが容易であるということが挙げられます。ナノチューブの長さが数十μmから1mm超と長いため、密度の高い層は顕微鏡を使わずに目視することができます。また、VANTAの塊はケーキのように切ったり持ち上げたり、運んだりすることが可能なため、チューブを成長させたシリコン表面からレーザー出力検出器へと容易に移すこともできます。

最も重要な特性は、このコーティング材が非常に黒いということです。NISTの研究チームは、長さ40μm、150μm、1.5mmの3つのVANTAのサンプルを評価し、チューブ長が長くなるに従って、反射される光が減ることを見出しました。長さ1.5mmのチューブが反射するのは波長394μmの光のわずか1%であり、ほとんど光を反射しないと言えます。この評価結果は、ほぼ全てのレーザー光がVANTAに吸収されるため、高精度のレーザー出力測定が可能であることを示すものです。

長さ1.5mmのVANTAは、ゴールドブラックなど他のコーティング材よりも多くの光を吸収しますが、諸々の不確実性を計算し、光の入射角度といった要素の影響を推定するためにはさらなる研究が必要です。今回のプロジェクトでは、NISTが長年にわたって取り組んできたレーザー出力測定技術や、研究チームのリーダーであるJohn Lehman氏の最近の研究成果「超暗黒ナノチューブ」などをさらに発展させようとしています。

VANTAは、熱特性の面でも望ましい材料です。他の暗色系コーティング材と比較すると、VANTAは急速な熱の吸収・放出ができることが分かっており、このことから検出器の応答性向上と迅速な信号出力に適していると考えられます。この特性がない場合は、長波長の光を吸収するための十分なコーティング厚をとろうとすると、検出器への熱伝達効率が低下してしまうことになるでしょう。

NISTでは、テラヘルツレーザー放射分析法の開発にあたって、繰り返し測定用に設計されたテラヘルツレーザーと、レーザー出力測定用のサーモパイル(熱電対列)と呼ばれる検出器を作製しています。このシンプルな検出器は、二つの異なる金属の接合部に熱が加わると電圧が生じるように設計されています。今回のNISTの研究は、サーモパイルのプロトタイプのコーティング用にVANTAを使うというものでした。現在、参照標準として用いることのできる検出器を設計するために、さらなる研究が計画されているところです。

原文 http://1.usa.gov/qeO3si
訳 SJN

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