ケンブリッジ大、ナノ構造を有する超高硬度バルク鉄を開発 ― NIMS Conference 2012@つくば

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物質・材料研究機構(NIMS)が、2012年6月4~6日の3日間、つくば国際会議場(つくば市)で「NIMS Conference 2012」を開催している。「持続性社会に貢献する構造材料科学 -基本原理への回帰-」をテーマに掲げ、震災復興、構造物の信頼性の検証、省エネルギー材料、高安全材料の開発などについて、議論が交わされる。

高硬度バルク鉄のナノ構造について解説するHarry K.D.H. Bhadeshia氏 (筆者撮影)

開催初日の6月4日には、構造材料分野での特に際立った研究開発成果に対して送られる「NIMS Award 2012」受賞者の記念講演が行われた。その中で、ケンブリッジ大学 材料科学・冶金学教授 Harry K.D.H. Bhadeshia氏から、ナノ構造を有する超高硬度のバルク鉄についての報告があった。

この材料は、バルクのオーステナイトの内部にナノスケールのフェライトのプレートレットが組み込まれた構造となっており、従来のナノ材料のように複雑で難しい作製プロセスを必要としないことが特徴。Bhadeshia氏によると、通常の製鉄プロセスとの大きな違いは、最大10日間かけて「ピザを焼く時くらいの温度」でゆっくりと熱処理することであるという。製造コストも非常に低くすることができるとしている。

オーステナイト内部に形成されるフェライトの細長い結晶構造は厚さ20nmで、カーボンナノチューブ(CNT)よりも微細なスケール。この結晶が体積あたり極めて多量に隙間なく含まれているため、これまで知られている材料の中でも界面密度が最も高くなり、極めて強固な材料構造が得られる。機械強度はCNTのロープと同程度あり、耐衝撃性も高く、通常の鉄と同じように扱うことができるという。

この材料は、インドの製鉄会社タタ・スチールによってすでに1000トン超が生産され、シャフトや装甲板のような特殊用途で実用化されているという。Bhadeshia氏は、溶接技術を使った加工方法を確立することが今後の課題であるとしている。

この他、NIMS Award 2012は、カリフォルニア大バークレー校 材料科学・工学教授 John William Morris, Jr.氏が「金属材料の強度メカニズムの理論的理解」、米国立科学財団(NSF)長官 Subra Suresh氏が「構造材料およびバイオ材料研究のためのマクロからナノスケールに及ぶ横断的な材料科学の確立」の業績で受賞している。

(取材/荒井聡)


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