霊長類を使って量子ドットの生体への毒性調査、90日経過も異常見られず ― 米中シンガポールの共同研究

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米国・中国・シンガポールの共同研究チームが、霊長類を実験体として量子ドットの生体への毒性を測定する調査を実施。これまでのところ、セレン化カドミウム量子ドットを体内に注入したアカゲザルでは、3か月~1年の観察期間中、特に異常は見つかっていないとしている。量子ドットについては、その発光特性を画像誘導手術や光活性化療法、高感度診断などの医療用途で用いたり、太陽電池や量子コンピュータ、LEDなど多様な分野へ応用する研究が進んでおり、生体に対する毒性の解明が求められている。

クラスタ状の量子ドットの透過電子顕微鏡画像。各クラスタは、平均サイズ50nmにカプセル化されて用いられる (出所: バッファロー大学)

研究を行っているのは米国バッファロー大学、中国人民解放軍総医院、長春理工大学、シンガポール南洋理工大学らの国際共同チーム。先行する研究例はマウスやラットを対象とするものに限られており、ヒトにより近い霊長類を使った研究は今回が初めてであるとする。2012年5月20日付の「ネイチャー・ナノテクノロジー」オンライン版に論文を発表している。

4匹のアカゲザルの体内にリン脂質ミゼルによってカプセル化したセレン化カドミウム量子ドットを注入し、経過を観察した。実験に使われた量子ドットは平均7~8nm径の大きさ。平均サイズ50nmくらいのクラスタを形成した量子ドットの集まりが、リン脂質ミゼルによってカプセル化されている。

実験の結果、注入後90日後もアカゲザルの血液その他の生物医学的指標は正常値の範囲にとどまり、主要な臓器にも異変は見られなかったという。アカゲザルのうち2匹に対しては、さらに1年間観察を続けたが、やはり病気の兆候は見られなかった。

ただし、研究チームは、霊長類への量子ドットの長期的影響を究明するためにはさらなる調査が必要であると指摘している。毒性の可能がある量子ドット由来のカドミウムのほとんどが、90日の実験期間を通して動物の肝臓、脾臓、腎臓に留まっていたためである。カドミウムの集積は深刻な懸念事項であり、引き続き調査が求められるとする。

アカゲザルの各器官の顕微鏡画像(倍率40倍)。右が量子ドットを注入した個体、左が対照用の個体のもの。(a)脳、(b)心臓、(c)肝臓、(d)脾臓、(e)肺、(f)腎臓、(g)リンパ液、(h)腸、(i)皮膚 (Prasad et al., Nature Nanotechnology (2012) doi:10.1038/nnano.2012.74)

論文では、量子ドットの形態が肝臓と脾臓でゆっくりと劣化しながらカドミウムの自由イオンを放出し、これが腎臓に集積していることが、ICP-MSによる分析結果から強く示唆されると考察している。セレンに対するカドミウムの比率が肝臓・脾臓よりも腎臓で高くなっている理由が、ここから説明できるという。

カドミウム集積に関する懸念があることから、研究チームのメンバーであるバッファロー大 化学・バイオ工学教授 Mark Swihart氏は、薬物にセレン化カドミウム量子ドットを入れて生体内で使用する場合、容量を制限することが望ましいと話している。画像誘導手術は、こうした容量制限が可能な使用法の1つである。画像誘導手術では、腫瘍やその他の目標部位を特定するために量子ドットを1回投与するだけでよいためであるという。


発表資料

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