コーネル大ら、鉄系高温超伝導の仮説を支持する実験データ確認。クーパー対形成に関与するエネルギーギャップをSTMで観測

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コーネル大学とブルックヘブン国立研究所が、鉄系高温超伝導の発現機構に関する仮説を支持する実験データを確認したとのこと。実験データは、鉄系高温超伝導体において超伝導を担う電子のクーパー対形成に電子の磁性(スピン)の相互作用が深く関わっていることを示唆するものであり、高温超伝導の発現機構の解明や、より高温で動作する新規の高温超伝導材料の開発に指針を与える成果であるとしています。

鉄系高温超伝導のクーパー対に関与しているとみられる3つのエネルギーバンドを三次元化したグラフ。円筒の高さが電子を結び付けてクーパー対を形成しているエネルギーを表している。クーパー対形成エネルギーはバンドごとに異なっており、クーパー対が移動する方向によって変化するという (Provided/Davis Lab)

超伝導状態は、スピン方向が互いに逆向きの電子2個がペアになったクーパー対を形成することによって成り立つとされます。クーパー対は磁気的に中性であるため、他の粒子が発生させる磁場の影響を受けずに材料中を移動することができると考えられています。

しかし、超伝導状態が現れる相転移温度Tcが比較的高い高温超伝導では、クーパー対ができる仕組みがいまだによく分かっていません。これまでに提示されている鉄系超伝導の仮説では、結晶中の隣り合う原子同士が同じレベルのエネルギー準位にあるときだけ、クーパー対が形成されると考えられており、もしこの仮説が正しければ、鉄原子における異なったエネルギー準位に応じてそれぞれ異なったエネルギーギャップのペアが見つかるはずであるといいます。

研究対象となったリチウム-鉄-ヒ素化合物(LiFeAs)の高温超伝導材料(Tc=15K)では、クーパー対の形成に関与するエネルギー準位としてとり得る状態が5つあるとされており、今回このうちの3つのバンドが、ボゴリューボフ準粒子散乱の干渉を観測する実験によって確認されたとのこと。研究を主導するコーネル大 物理科学教授 兼 ブルックヘブン研究所 超伝導発現研究センター長のSeamus Davis氏は「5つのエネルギーギャップのうち2つが見つかっていない理由はまだ分からない」と話していますが、3つが見つかったことは仮説を十分強く支持する結果であるとしています。

測定に使われた走査型トンネル顕微鏡(STM)は、原子1個分の大きさしかない超極細のプローブ先端によって原子の直径より小さいステップで試料表面を走査するというもの。STMのプローブに正の電荷がかかると、プローブが試料表面から電子を引き離すことで微小な電流が発生するため、電荷の大きさを変えることによってプローブ直下の電子のエネルギー準位が測定可能。実質的には、原子から電子を引き離すためにどれだけのエネルギーがかかっているかを測定しており、今回の場合はクーパー対を引き離すために必要なエネルギーを測っていることになるといいます。

研究チームは、このSTMを使ってLiFeAs表面の95nm2の領域を走査し、実空間での原子の位置の画像と、電子のエネルギー準位のデータを取得。クーパー対の存在を確認しただけでなく、クーパー対が近傍の原子にぶつかって壊れるときに放出される電子を表す信号の観測にも成功したとのこと。これにより、クーパー対が原子から出てくるときの方向を特定することができるようになるといいます。

研究の次の課題は、今回と同じ手法を使って別種の鉄系超伝導体でも仮説を支持する結果が得られるかどうかを確認すること。このような実験によって仮説の正しさが示されれば、モデルを使って他の元素やその組み合わせから現れる特性を予測することができるようになり、さらなる高温超伝導材料の開発指針が得られると考えられます。


コーネル大学の発表資料
ブルックヘブン研究所の発表資料

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