SJNが2011年7月8日~10日に実施したアンケート「あなたが好きな太陽電池を教えてください」の投票結果がまとまりました。全投票数は81票、最も人気が高かったのは「色素増感太陽電池」でした。
1位 色素増感太陽電池 26票(16.1%)
2位 単結晶シリコン太陽電池 21票(13%)
3位 有機薄膜太陽電池 20票(12.4%)
4位 量子ドット太陽電池 16票(9.9%)
5位 GaAs系化合物太陽電池 15票(9.3%)
また、6位以下は次のとおり。
薄膜シリコン太陽電池 13票(8.1%)
多結晶シリコン太陽電池 11票(6.8%)
CIS/CIGS系化合物太陽電池 11票(6.8%)
CdTe系化合物太陽電池 7票(4.3%)
集光型太陽電池 6票(3.7%)
ウイルス利用型太陽電池 5票(3.1%)
太陽磁気電池 2票(1.2%)
その他 8票(5%)
一番人気のあった色素増感太陽電池は、光を受けると電子を放出する性質がある「増感色素」を使うもので、植物の光合成に似た反応を利用する仕組みです。結晶、薄膜、化合物、有機薄膜、量子ドットなど様々な種類の太陽電池が、どれも基本的には半導体のpn接合を発電原理としているのに対して、pn接合を用いないという点で、色素増感太陽電池はかなり異色な存在ともいえるでしょう。半導体製造プロセスと比較して低コストな塗布技術で製造できるという特徴もあります。塗布プロセスが使えるのでフレキシブル基板に向いており、色素のバリエーションによってカラフルな意匠性も出せるので、今後市場拡大が予想される建材一体型太陽電池としても期待できると思います。
アンケートで色素増感太陽電池に寄せられたコメントには、「簡単に作れるところが好きです。うまく作ればそれなりの出力が得られるところも魅力」「色素増感は設置場所などで従来太陽光電池が使えなかった所への利用に期待」「色素増感のパネルで効率がよくなればレーシングソーラーカーのデザイン性ももっと豊かになるとおもうw」などがありました。
変換効率については、現状シリコン系やCIGS系などと比べるとやや低いものの、光の入射角依存性が小さく、散乱光を拾いやすいという性質があるので、曇りがちな地域など設置場所によっては年間発電量がシリコン系と同等かそれ以上になる場合もあるようです。
2位の単結晶シリコン太陽電池は、商用化されている中では最も変換効率が高く、安定した実績が評価されたというところでしょうか。
3位には、有機薄膜太陽電池が入りました。色素増感太陽電池と同じく、塗布印刷技術で製造コストを下げられるのが魅力ですね。有機薄膜太陽電池には「無機物は飽きた。これからは有機化合物の時代」「製造プロセスが簡便でコストが安くなる見込みが高いから」「構造が簡単でコストが安いし応用範囲が広そう」「有機最高」「有機薄膜太陽電池大学に行って特に勉強したいたいようでんちですわ!! by奈良県の高3」などのコメントが寄せられていました。
先ごろ東大とシャープが発表した「変換効率75%」という理論限界値がニュースでも話題になった量子ドット太陽電池は、4位でした。量子ドット太陽電池の理論的な変換効率は非常に高いですが、実際にその性能を引き出すにはドット配列がきれいに揃った超高品質の半導体ナノ結晶を作る技術が必要です。特に量産化に向けた製造技術の面で、未解決の問題がたくさんあると思いますが、こうした分野でこそ、日本独自のものづくりの力を発揮してほしいところです。投票コメントにも「量子ドット早く実用化して」という意見がありました。
5位のGaAs系化合物太陽電池には、「これ積んだソーラーカーが速い」「高効率だから。東海チャレンジャー最高!」などのコメントが。東海大・木村研究室が開発しているソーラーカーがシャープ製のGaAs太陽電池を搭載し、オーストラリア、南アフリカ共和国など世界各地のソーラーカーレースで優勝していることも、人気の一因のようです。
化合物系太陽電池は、選択肢として挙げたGaAs、CIS/CIGS、CdTeが実用化で一歩進んでいますが、その他にもいろいろな種類の材料で研究開発が活発に行われています。その中でも「窒化物太陽電池に期待しています」「Ⅲ続窒化物系の波長領域の広さに期待」など、窒化物へのコメントが目立ちました。LED照明で実用化が進んでいるガリウムナイトライド(GaN)などⅢ-Ⅴ族窒化物半導体をベースとする次世代太陽電池には、SJNとしても今後ますます注目していきたいです。
ご協力ありがとうございました。
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