カタロニア・ナノテクノロジー研究所(ICN)とカリフォルニア大学サンディエゴ校の共同研究チームが、原油流出などで汚染された水から油を回収除去する能力のあるナノマシンを開発したとのこと。

マイクロ潜水艦の移動速度と油回収量の関係。aは空荷の状態で速度26μm/秒。dは最大量を回収したときで速度11μm/秒程度となる (Image courtesy of ACS Publications)
「マイクロ潜水艦」と呼ばれるこのマシンは、チューブ状のマイクロエンジンに極めて疎水性の高い膜を1層コーティングしたもので、この疎水層に油が吸着する仕組み。
潜水艦の推進力には、チューブ内で過酸化水素が酸化するときに発生する泡を用いており、最大で毎秒26μmの速度で移動。自身の体積の10倍の油を輸送可能であり、最大容量まで油を収容したときの移動速度は毎秒11μm程度に下がるといいます。
研究チームは、この潜水艦を大きく分けて3つの手順で作製したとしています。第1段階では、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)と白金の二重層をポリカーボネートのテンプレートに電気めっき。
第2段階では、ニッケルと金の二重層を第1段階で形成した層の上に成膜します。これには電子線リソグラフィが用いられます。この時点で、とりあえず潜水艦の形になりますが、このままでは石油の輸送には使えません。
最終段階として、ドデカンチオールの自己組織化した単分子膜(SAM: self- assembled monolayer)で潜水艦を覆います。このSAMが持っている極めて高い疎水性によって、水と油の界面において油を捕捉できるようになるのだといいます。
研究チームは、潜水艦の推進速度と輸送する油の量の組み合わせがどのような影響を及ぼすかを調査。その結果、鎖の長さの異なる他のアルカンチオール類と比べて、ドデカンチオールで性能が最適化されることが分かったとします。今回の成果は、汚染水浄化に向けた新デバイス、新手法の開発へつながるものと考えられます。特に、原油流出などによる海洋環境汚染対策技術への応用が期待されるところです。
発表資料
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