スタンフォード大、グラフェン圧電体の作製に成功。歪みを利用したデバイス制御技術「ストレイントロニクス」を提唱

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スタンフォード大学の研究チームが、グラフェンを用いた圧電材料の作製に成功したとのこと。シリコンの100倍の導電性、ダイヤモンドより高い機械強度、原子1個分しかない薄さなど様々な特性を持つグラフェンですが、曲げたり押したりねじったりしたときに電荷が発生する圧電性が付与されたのは今回が初めてであるとしています。

リチウム原子(赤)がグラフェンの格子に結合しているところ。これを曲げたり、押したり、ねじったりすると電気が生じる。逆に、電界を印加してグラフェンを変形させることもできる (Credit: Mitchell Ong / Stanford School of Engineering)

圧電効果は、時計やラジオ、ガスコンロの点火ボタンなど、様々な機器に利用されていますが、これらの用途で使われているのは比較的大きな三次元の圧電材料です。今回の研究は、二次元のグラフェンを使って、圧電効果の精密な物理的制御をナノスケールまで拡張した最初の例として注目されます。

圧電効果では、物理的な変形量と印加される電界が直接比例します。「この性質は、電子デバイスをナノスケールで制御するための原理的に新しい方法として利用することができる」と研究リーダーの Evan Reed氏は話します。Reed氏はグラフェンの圧電効果を用いた「ストレイントロニクス(straintronics: 歪み電子工学)」という概念を提唱。ストレイントロニクスとは、電界によって炭素の格子を歪ませ、予測可能な形で格子の形を変える方法であるとします。

論文の筆頭執筆者 Mitchell Ong氏は、「グラフェン圧電体では並はずれたレベルで電気的・光学的・機械的制御が可能であり、タッチパネルからナノスケールのトランジスタまで幅広い応用が期待できる」と話しています。

研究チームは、スーパーコンピュータを使用した高度なモデリングによって、グラフェン格子の片面への原子の堆積(ドーピングプロセス)のシミュレーションを行い、その圧電効果を測定しました。

このモデルでは、グラフェンの片面にリチウム、水素、カリウム、フッ素をドーピング。また、一方の面に水素またはリチウム、もう一方の面にフッ素をドーピングした場合についても検証しました。グラフェンの片面だけにドーピングすること、あるいは2つの面にそれぞれ異なる原子をドーピングすることが鍵となります。通常は、グラフェンが持っている完全な物理的対称性によって圧電効果がキャンセルされていると考えられますが、ドーピングのプロセスによって、この対称性が破られることになるからです。

その結果は驚くべきものでした。圧電効果は表れるものの、比較的小さなものになるだろうと研究チームでは予想していましたが、通常の三次元の圧電材料に比肩する顕著なレベルの圧電効果が生じることが分かったのです。

さらに「グラフェンの特定部位にだけ選択的に原子が配置するようにドーピングをパターン化することによって、圧電効果を精密に調整することも可能になった」とOng氏。研究チームは、これを「デザイナー圧電性」と呼んでいます。精度の高い工学的予測の下で電界をかけることによって、いつ、どこで、どのようにグラフェンが変形するかを戦略的に制御できるようになるからです。

今回、研究チームはグラフェン圧電体の作製に成功しましたが、同じ技術がナノチューブやその他のナノ材料にも適用できると考えており、エレクトロニクス、フォトニクス、環境発電、化学センサ、高周波音響工学など、幅広い分野に応用できるとしています。「すでに、グラフェン以外の二次元・低次元材料を用いた圧電デバイスの検討を開始しており、これらがナノテクノロジーの新たな飛躍的可能性を開くことを期待している」とReed氏は言います。


発表資料

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