スタンフォード大、高精度の気象モデルを使って洋上風力発電の候補地選定

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スタンフォード大学の研究チームが、高精度の気象モデルを利用して洋上風力発電の候補地選定を行ったとのこと。洋上風力発電の設置場所選定に高分解能の気象データが使われたのは今回が初めてのケースであるといいます。

米国東海岸沿いでの洋上風力発電所の設置検討を行った12か所のマップ。高精度の気象モデルを使った分析により、赤枠で囲まれた4つのサイトが最終的に選定された (Credit: Mike Dvorak, Stanford School of Engineering)

米国・東海岸エリアは、米国全土の電力需要の34%、CO2排出量の35%を占める一大エネルギー消費地。研究チームは今回、この東海岸沖の12か所の候補地点の中から洋上風力発電に最適な4つのサイトを選定しました。

これらの風力発電所が相互接続された場合の最大出力は2000MWとなる見込みで、石炭火力発電所1.5基分に相当。4つのサイトには、それぞれ100機程度のタービンを設置し、最大出力はそれぞれ500MWになるとしています。

研究チームの 土木環境工学教授 Mark Z. Jacobson氏によれば、「4つのサイトで合計2000MW」という数値は確定的なものではなく、経済面・環境面・政策面での判断によって規模や設置場所の調整も可能とのこと。論文の筆頭執筆者 Mike Dvorak氏は「この地域の陸上電力網を洋上へ拡張することによって、電力の信頼性が向上し、需要過密状態やエリア間での電力価格の差も軽減される」と話しています。

研究チームが選定した4つのサイトは、ニューヨーク州ロングアイランド沿岸からジョージズ・バンク(ケープコッドの東100マイルにある浅瀬)までの海域に位置しており、海岸に近いいくつかの発電所では、陸地と海の間の温度差によって常に吹き続けている海風が利用できるといいます。陸上と比べて激しく不規則な強風に曝されるのも洋上風力発電の特徴。このため、4つの発電所を相互接続することによって、電力網全体の出力の均衡を促すとします。

「つい最近まで、大規模風力資源の評価では時間の側面が考慮されてこなかった」とDvorak氏は指摘します。今回の研究の特徴は、1日のうちの特定の時間における電力の需要ピークと供給ピークを一致させたところにあるといいます。通年での需給ピークについても同様に一致させています。

陸上の風力発電所では、電力需要の低い夜間に1日の出力ピークが来る傾向がみられます。また、季節的な需要ピークはエアコンの使用が増える夏の午後遅くにあたりますが、この季節のこの時間帯は風が吹かないことで有名であり、東海岸沿いに吹く風にバミューダ高気圧が影響を及ぼす時期としても知られています。マサチューセッツ州のようにバミューダ高気圧によって海風が強まる地域もありますが、ロングアイランド南部では同じバミューダ高気圧が逆の働きをし、海風を妨げることがしばしばあるといいます。

研究チームのモデルでは、需給サイクルのマッチング以外にも、以下のようにバランスをとらなければならない技術的課題がいくつかありました。

  • タービンは海底に据え付けるため、設置点の水深は50m未満とすること。
  • ボストンやニューヨークなど電力負荷の中心地近くに位置すること。
  • 発電出力の平滑化。時間単位での急な出力上昇を和らげ、まったく発電が行われない時間を減らすこと。

現在、洋上風力発電所はどこも陸上の電力網と個別に接続されており、発電所同士を相互に接続するという今回のアプローチはこれまでにない新しいものです。このアプローチにより、風力発電所からの電力供給がゼロになる時間は、それまでの9%から4%に減るといいます。

最終的な分析では、相互接続された風力発電所の通年での発電能力は総出力の48%超、すなわち1年を通して平均1000MW近い出力での安定した発電が可能との結果を得たとのこと。「一般的には、風力発電の平均出力が35%を超えていれば非常に優秀とみなされる」とJacobson氏は言います。

なお、気象モデルで選定されたサイトの1つであるナンタケット海峡は、洋上風力発電所建設をめぐって以前から賛否が分かれている「ケープウィンド計画」の候補地にぴったり一致しているとのこと(反対派は、洋上風力発電所の建設によって、この地域の美しい景観が損なわれると主張)。別の2つのサイトは、かつてタラの漁場として有名だったジョージズ・バンクに位置し、4番目のサイトはロングアイランド中部沖にあります。研究チームは、これらの洋上風力発電所の設置について経済性の面からも検討。いくつかの州がコストを分担できるという利点があり、建設計画に対する政策支援が拡大する可能性もあるとしています。


発表資料

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