コーネル大、多孔質金属膜の導電性を1000倍高める技術を開発。電池材料、バイオ医療分野で幅広い応用期待

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コーネル大学の研究チームが、従来比1000倍に導電性を高めた多孔質金属膜の作製技術を開発したとのこと。電池材料をはじめ、工学・バイオ医療分野に幅広く応用できる金属ナノ構造の開発につながると期待されます。

ゾル-ゲル法で形成された自己組織化プロセスによる金属含有膜のサンプル。基本的にはガラス質の膜であり、その中に金属原子が分散されている。金属元素の種類によって膜の色が異なる。格子線は5mm間隔 (Image courtesy of Wiesner Lab)

研究チームの工学教授 Ulrich Wiesner氏は、今回の成果について「材料の組成、ナノ構造、機能性(導電性など)をこれまでにない高いレベルで制御できるようになったこと」と説明。これらの制御は、すべてシンプルなワンポット法による混合・加熱手法で実現できるとしています。

多孔質金属膜は化学反応に利用できる表面積が大きいため、燃料電池触媒や電池電極材料として有望ですが、これまで導電性を高めるのが難しいという問題がありました。今回報告された新技術は、化学分野ではなじみ深い「ゾル-ゲル法」を利用するもの。ある種のシリコン化合物を溶媒に混ぜると、自己組織化プロセスによってナノスケールの孔を持つ二酸化ケイ素(シリカ)のハチの巣構造が形成されますが、導電性を持たせるための金属を多孔質構造に添加することが課題となっていました。

10年ほど前、Wiesner氏のグループは、コーネル大の燃料電池研究所と共同で、発電用燃料分子からプロトンを引き抜くためにゾル-ゲル法を使うことを試みました。彼らが必要としていたのは大きな電流を通すことができる材料でしたが、「ネイチャー・マテリアルズ」に掲載された論文の筆頭執筆者 Scott Warren氏の説明によれば、金属の添加量を少し増やすとゾル-ゲル・プロセスが途切れてしまったといいます。

3-イソシアナトプロピルトリメトキシシラン(ICPTS)がアミノ酸と結合。これが金属酢酸塩から金属イオン(図中のM)を奪うことで、酢酸が残される。Warren氏は、この構造から新手法を思いついたという (Image courtesy of Wiesner Lab)

Warren氏が考案したのは、金属原子をシリカ分子に結合させるためにアミノ酸を用いる方法でした。アミノ酸分子の一方の終端にはシリカとの親和性があり、もう一方の終端には金属との親和性があることが分かっていたからです。

「もしもシリカのゾル-ゲル前駆体に金属を直接結合させる方法があれば、自己組織化プロセスの中断要因となる相分離を防ぐことができるのですが」とWarren氏。

研究の直近の成果は、金属、シリカ、炭素から構成されるナノ構造において従来よりも金属の量を増やすことで導電性を大幅に向上させるというものです。この手法では、シリカと炭素の取り去りが可能であり、後に多孔質の金属が残ります。ただし、ある種の燃料電池内にみられる高温条件下では、シリカ-金属の構造がその形状を保持することがあるとWarren氏は指摘します。また、炭素と金属の複合体を残してシリカだけを取り去ることによって、孔の口径を大きくするなど、別の特性を付与することもできるとします。

研究チームが報告した幅広い実験は、こうしたプロセスを用いて材料の組成と構造を高度に制御できることを示すものです。研究チームは周期表のほとんどすべての金属元素で構造形成を行っており、化学物質の添加によって孔の寸法を10~100nmの範囲で調節できるようになっているとのこと。また、ヒトが摂取・分泌可能なサイズで内部に金属を充填したシリカナノ粒子も作製しており、バイオ分野へ応用できる可能性があるとしています。

Wiesner氏のグループは、シリカナノ粒子内に色素を封入した「コーネルドット」の開発でも有名。これは、ゾル-ゲル法が色素増感太陽電池の作製にも応用できることを示唆するものです。色素増感太陽電池の考案者であるスイス連邦工科大学ローザンヌ校の Michael Graetzel氏も今回の論文の共同執筆者となっており、導電性能の測定はGraetzel氏の研究室で行われています。


発表資料

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