刑務所にマイクログリッド構築 ― カリフォルニア州

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米国カリフォルニア州ダブリンのサンタ・リタ刑務所が、2011年末から所内の電力を自前で賄うマイクログリッドの運転を開始。これにより、大規模停電などの影響を受けることがなくなるとしています。計画はシェブロンが主導し、マイクログリッド制御ソフトの開発をローレンス・バークレー国立研究所が行っています。

バークレー研究所の科学者 Chris Marnay氏。マイクログリッドの研究を10年以上続けている (Photo: Berkeley Lab photo archive)

同刑務所は、カリフォルニア州で3番目、全米で5番目という大規模な施設であり、約4000人の囚人が収容されているとのこと。計画が順調に進めば、この巨大刑務所は系統電力網からシームレスに切り離され、独自のマイクログリッドによる電力自給体制に切り替わることになります。

バークレー研究所では、DER-CAM(Distributed Energy Resources-Customer Adoption Model)という電気・熱エネルギー管理ソフトを開発。これを使って、刑務所のコストが最小化されるようにマイクログリッド計画を支援するとしています。

研究チームの科学者 Chris Marnay氏は、マイクログリッドの最大の長所は特殊な要件に合わせて調整可能なことであると言います。刑務所の場合、任務に対して非常に高い信頼性が要求されるため、マイクログリッドはその信頼性確保を支援する役目を果たすことになります。

2011年の巨大ハリケーン「アイリーン」など自然災害時に見られたとおり、停電は深刻な混乱と大きな経済的損失をもたらします。「自立発電を行う理由としては、停電をしのぎ、ローカルな電力品質を改善したいということもある」とMarnay氏は言います。

サンタ・リタ刑務所におけるピーク時の電力需要はおよそ3MWに達しており、省エネルギー化は以前から同刑務所の運営方針の1つとなってきました。過去20年間、様々な省エネ施策が導入され、刑務所は電力需要の40%削減を実現。系統電力への依存度を減らすために、屋上設置型の太陽光パネル1.2MW、溶融炭酸塩型燃料電池1MW、5機の小型風力発電機なども導入されています。

サンタ・リタ刑務所に設置された燃料電池 (Photo courtesy Alameda County)

今回のマイクログリッド化では、新たにリン酸鉄リチウム二次電池2MWを設置することで、停電時にバックアップ用発電機を起動させずに電力供給が続けられるようにします。長時間の停電で二次電池に貯蔵した電気を使い切った場合には、マイクログリッドが発電機を起動させ、刑務所への電力供給を開始。同時に二次電池への充電も行います。

DER-CAMソフトは、これまでも二次電池の充放電スケジュールを最適化してコストを最小に抑えるために使われてきました。ニューメキシコ大学構内で機械工学部棟に設置されている大規模太陽熱発電設備のダイレクト制御や、ロサンゼルス空軍基地での電気自動車フリート試験における充電最適化用途などで採用されています。

二次電池を使った電力貯蔵を行うことによって、ピーク時を外して安い価格で電力を購入したり、夏場のピーク時の電力消費を最小化することも可能です。燃料電池、太陽光パネル、風力発電機もマイクログリッドに統合し、稼働率を最大に高めて刑務所への電力供給に使用するといいます。

マイクログリッドを系統電力網からシームレスに切り離し、単独で機能させた後に再び電力網につなぎ直す技術は、CERTSマイクログリッドと呼ばれています。これはバークレー研究所が主導する10年間の長期研究プログラムの一環として、ウィスコンシン大学に設置された電力信頼性技術ソリューション共同研究体(Consortium for Electric Reliability Technology Solutions)によって開発されたもの。また、バークレー研究所需要レスポンス研究センターでは、カリフォルニア州エネルギー委員会による助成を受け、一層の低コスト化と系統電力のサポートを行うための刑務所内での負荷制御オプションについての研究も行うとしています。

マイクログリッドは、系統電力に接続された状態で機能させることも可能です。これにより、刑務所での電力料金を削減でき、ローカルな配電ネットワークの負荷軽減にもなります。Marnay氏によれば、マイクログリッド実証実験では、刑務所の近隣にあるPG&Eの配電線に対する負荷軽減効果も検証するとのこと。刑務所が近くにある負荷と協調することによって配電線のピーク負荷を軽減できれば、電力会社にとってはキャパシティ増強のための設備改修を先送りできるため大きな経済的利益になるといいます。

信頼性向上の他にも、マイクログリッドにはいくつかの利点があります。その1つが、太陽光や風力などの分散型エネルギー向けに調整可能なシステムであるということです。小規模で制御が難しい再生可能エネルギーを従来の電力網に統合するには、何らかの調整が必要となります。再生可能エネルギーは刻々と出力が変動していきますが、電力の需給バランスは常に維持されなければならないからです。

「この考え方を推し進めていくと、私たちは今より信頼性の低い電力網でも生活できるようになる可能性が出てくる」とMarnay氏は言います。刑務所のように非常に慎重に扱うべき負荷が、より局所的な方法で扱えるようになるからです。かなり議論の余地がある問題ではありますが、これもマイクログリッドの長所と言えます。

「これは、従来の電力網の限界を破る大きな長所であると私は考えます。現在のシステムでは、iPhone充電と病院の生命維持装置を区別したり、優先順位をつけたりすることができないのです」

病院や大学キャンパスと並んで、軍事セクターもマイクログリッドに強い関心を寄せています。そこではエネルギーの保全と信頼性が最優先されるためです。2011年初頭、米国エネルギー省は、クリーンエネルギーとエネルギー保全の分野で国防省との連携を強めると発表。コスト効率の良いエネルギー貯蔵技術の開発も、そこでのテーマの1つとなっています。これからMarnay氏が参加するロサンゼルス空軍基地での大きなプロジェクトも、国防相のマイクログリッド実証実験計画の一環であるといいます。


発表資料

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