リチウムイオン電池用シリコン炭素負極の充放電動作をTEMで観察 ― PNNL

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米パシフィック・ノースウェスト国立研究所(PNNL)が、リチウムイオン電池用の新規シリコン炭素負極の充放電動作の様子を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察。電極の膨張や相転移などについて報告しています。シリコン炭素負極によるリチウムイオン電池の高容量化・長寿命化のメカニズムを解明する研究として注目されます。

リチウムイオン電池のシリコン炭素負極。左が充電前、右が充電後 (Image courtesy of Pacific Northwest National Laboratory)

シリコン負極を用いたリチウムイオン電池は従来の炭素負極と比べて高容量化できますが、充電時の体積が放電時の3倍も膨張するという問題があり、電池パックに材料を詰め込んだ場合、充電時に破裂する危険もあります。このため詰め込んだときにも性能が落ちないナノ材料を用いた電極の研究が進められています。

今回PNNLの研究者 Chongmin Wang氏らのチームが試験したのは、カーボンナノファイバにシリコン薄膜をコーティングした負極材料。これはオークリッジ国立研究所、アプライドサイエンスとGMグローバル研究開発センターが共同開発した材料であり、カーボンの特徴である導電性とシリコンの高容量性を兼ね備えているとされます。

Wang氏らの研究チームが最初に調べたのは、シリコン炭素負極が吸蔵できるリチウムの量と小型の試験用電池(ハーフセル)に負極を組み込んで充放電したときの容量の変化。その結果、100サイクルの充放電後にも1000mAh/gの高容量が維持されていることが分かったといいます。従来のリチウムイオン電池の5~10倍の容量です。

しかし、研究チームは、充放電に伴うシリコンの膨張収縮によって材料が疲労することで、電池寿命に影響が出るのではないかと考えました。そこでWang氏は伸長の繰り返しによる電極の疲労度を調べるために、微小な電池を特別設計し、PNNL環境分子科学研究所のTEMで観察。これにより、微小な電池が実際に使用されているところを調べられるようになり、充放電時の電池の様子を画像と動画に収めることにも成功しました。

リチウムイオンはカーボンファイバの長さ方向に沿ってシリコン内部に流入することが判明。その速さが毎秒130nm程度であることも分かりました。これはシリコン単体の負極と比べて約60倍の速さであり、下層のカーボンによってシリコンの充電速度が向上したことを示唆しています。

予想された通り、リチウムイオンが入りこんだとき、シリコンの体積は3倍程度膨張。しかし、カーボンによる支持があることと、シリコンが構造化されていないことから、膨張は均一なものになったといいます。一方、シリコン単体の場合、膨張が不均一に起こるため欠陥を生じる原因となります。

リチウムは、シリコンに対して膨張以外の変化を起こすことでも知られています。リチウムとシリコンを組み合わせると、最初は構造化されていないガラス質の層を形成しますが、リチウムとシリコンの構成比が15:4になると、ガラス質の層が急激に結晶化するのです。

研究チームは、この結晶化のプロセスを顕微鏡で調べました。その結果、ある一点から結晶が出来始める通常の結晶化プロセスとは異なり、リチウムとシリコンの層は一度に全体が結晶化することが分かったといいます(コングルエントな相転移と呼ばれる種類の結晶化)。また、リチウムとシリコンの結晶化は永続的なものではなく、放電時にリチウムの構成比が下がると結晶からガラス質にもどるということも解明しました。

繰り返し使用が電極にどんな痕跡を残すかについても調査。微小な電池を4回充放電し、充電1回目と4回目で同一部分を見比べたところ、4回目では表面が粗くなり、穴ぼこが開いた道路のようになっていたといいます。

表面の変化は、放電時にリチウムイオンが通った跡がダメージとして残ったものであるとWang氏は言います。「繰り返し充放電に伴い、滑らかな電極表面が粗くなっていく様子を観察することができます。サイクルを重ねるにつれて小さな欠陥が生じ、それらの欠陥が集まっていくのだと考えられます」

ただし、非常に薄いシリコン層は、厚いシリコンと比べて壊れにくくなります。厚いシリコンでは、リチウムイオンが残す穴は集まって大きな空洞を形成しますが、シリコン炭素負極ではシリコン層が薄いため、空洞は大きくなりません。「浅い水の中でできた小さな気泡は水面に到達しますが、深い水中の泡は集まってより大きな泡になります。それと似た感じです」 研究チームの今後の課題は、シリコン層の膜厚や下層のカーボンとの結合状態を詳細に調べ、電極の性能や寿命を最適化することであるとしています。


発表資料

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