ヴァンダービルト大、グラフェンの性能低下要因を特定

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ヴァンダービルト大学の研究チームが、グラフェンの性能低下を招く要因を特定したと発表。それによると、グラフェンの性能低下要因となっているのは、不純物に由来する電界であるとのこと。また、この電界を抑制することにより、グラフェンデバイスの電子移動度が従来の3倍以上高くなることを確認したとしています。

走査型プローブ顕微鏡によるグラフェンデバイスの画像。6個の長方形のカラムの間にあるオレンジ色の部分がグラフェンシート。カラムは上部を金で覆ったSiO2でできている (A.K.M. Newaz / Bolotin Lab)

グラフェンは炭素原子によって形成される平面構造であり、蜂の巣状の結晶構造を持ち、厚さは原子1個分しかありません。アルミニウムより軽く、鋼鉄よりも機械強度があり、銅よりも優れた電気特性を持っているため、ディスプレイ、太陽光パネル、タッチスクリーン、IC、バイオ医療用センサなど様々な電子デバイスへの適用が試みられています。しかし、室温・常圧の条件下でグラフェンを動作させたとき、その潜在能力を十分に引き出すのは非常に難しいということが、これまでの研究で分かっています。

実際、グラフェンの電子移動度はシリコンなどと比べると著しく高いものの、これまでに測定されている電子移動度は、グラフェンの潜在能力からするとまだ相当低いレベルであるとされます。

物理学研究者 Kirill Bolotin氏によれば、グラフェンを作製するときに一緒にできてしまう不純物に問題があるといいます。グラフェンは外部からの影響を非常に受けやすい材料であるため、電荷を帯びた不純物が作りだす電界において移動中の電子が散乱してしまい、これがグラフェン・トランジスタの速度低下や発熱の原因になると考えられるのです。

グラフェン表面全体に散らばる不純物が性能低下の主要因であるという見方は、これまでも多くの研究者が提示してきたものですが、完全な確証は得られていませんでした。また、この現象を説明する説は他にもいくつか考えられてきました。

実験方法の図解。柱状のSiO2の上部を金の層で覆い、柱に沿ってグラフェンシート(水色)を吊るす。柱は、シリコンに熱をかけて成長させたSiO2層の上に形成されている。このデバイスを溶液に浸す。電圧をかけて溶液を電気的にバイアスさせると、液中に存在するイオンがグラフェンシートの両側に電気二重層を形成する (A.K.M. Newaz / Bolotin Lab)


 
グラフェンの電子移動度に関する問題を理解するために、研究チームは今回、グラフェンを様々な種類の液体に浸した状態で電気輸送特性を測定。電気的に中性で多量の電気エネルギーを吸収できる高誘電率の液体にグラフェンを浸したときに電子移動度が劇的に上がることを突き止めました。論文によると、芳香があり香水にも使われる無色の液体アニソール(比誘電率κ=4.3)に浸した場合、グラフェンの電子移動度は60000cm2/Vsという記録的な高さに達したといいます。

これは、不純物に由来する電界がアニソールによって抑えられたことにより、電子が移動するときの障害物が減ったためであると考えられます。この実験結果は、グラフェンの性能低下要因が電荷を帯びた不純物にあることを疑問の余地なく示すものである、Bolotin氏は言います。なお、この実験では、グラフェンにおける著しい電子散乱の要因が、表面のリプル(平面上にある凹凸のうねり)にあるとする説を支持する証拠は見つからなかったとのこと。

「グラフェンの電気的性能を低下させる要因がはっきり特定されたことで、信頼性の高いデバイス設計を行うことができるようになるはず」とBolotin氏。

また、外部環境からの影響を受けやすいというグラフェンの特徴を利用して、超高感度のセンサを開発することもできるかもしれません。特に、グラフェンが炭素だけでできていることを考えれば、生体適合性の高いバイオセンサ用途には理想的な材料であると考えられます。


発表資料

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