NIST、マイクロ波光子の周波数重ね合わせが制御可能な超伝導体回路 “optics table on a chip” を開発。新型量子コンピュータへ応用

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米国標準技術局(NIST)が、1個のマイクロ波光子を異なる2つの周波数(または色)の重ね合わせ状態にできる調節可能な超伝導体回路を開発したとのこと。量子力学の世界の特徴である「重ね合わせ」については、ビームスプリッタと呼ばれる装置を使って1個の光子を同時に2つの経路(レーザー、レンズ、ミラーなどが配置された光学テーブル上の経路)に送り込む光学実験が有名ですが、今回開発された回路では、マイクロ波を用いてチップ・スケールで、この重ね合わせを実現したそうです。同回路を使って、複数の異なる量子状態を作り出し、それらを操作することが可能です。したがってこれは、科学者の間で長く求められてきた “optics table on a chip”(チップ上の光学テーブル)の原型であると言えます。

▲NISTが開発した超伝導体回路optics table on a chip。約6mm幅の四角形のサファイアチップ上に形成されている。光子は、チップ中央部の人工原子(写真中の小さな黄色の四角形)によって作られる。左下にある矢印形の部分は、SQUID(矢印の近くの小さな黒っぽい領域)の調節に使われる伝送ラインにつながっている。SQUIDは、空洞共振器(曲がりくねった線の部分)の2つの共振周波数を結合、これらの周波数重ね合わせの異なる状態の間で光子が振動する (Image Credit: D. Schmidt/NIST)

また、NISTが行った実験では、線形光学量子計算を行うための量子ビットを、マイクロ波を用いて作り出すことにも初めて成功したそうです。このタイプの量子コンピュータでは、典型的には光の経路あるいは単一光子の偏光を利用した情報保存が想定されていますが、マイクロ波型ではこれとは対照的に光子の周波数で情報を保存します。量子コンピュータが実現すれば、現在は解くことが困難な多くの問題を解けるようになるでしょう。

NISTが開発した回路は、超伝導量子計算の実験で使用される単一光子光源、空洞共振器、超伝導量子干渉素子(SQUID: Superconducting Quantum Interference Device)などの部品を組み合わせたものです。研究チームはSQUIDの特性を調節することで、2種類の共振周波数を結合し、1個の光子が2つの異なる周波数重ね合わせ状態の間で振動するように操作しました。例えば、50:50の割合の重ね合わせと75:25の割合の重ね合わせの間を光子が行ったり来たりできるようにするということです。このような実験条件を設定することによって、光子を光学テーブル上に放出する代わりに、それを「箱」(空洞共振器)の中に捕獲するのです。

「これは、箱の中に捕獲された量子状態のマイクロ波を操作する新しい方法です」と研究チームの物理学者 Jose Aumentado氏は言っています。「超伝導体共振回路のようなチップスケールのデバイスの中で興味深い量子状態を作り出すということは、技術的には可能であるとすでに分かっています。そして、従来と同様の光学的条件設定で、こうした量子状態を操作できるのです。この新方法が刺激的である理由は、そこですね」

NISTの研究チームは、この回路が異なった量子状態をどのように結合するかを時間の経過に伴って制御することも可能であるとしています。その結果として、シンプルな光学回路を作製したり従来の光学実験を再現するための相互作用のシーケンスを作り出すこともできるようになります。例えば、単一光子の周波数または色を利用して、インターフェロメータ(干渉計)と呼ばれる測定器を作製したり、スクイーズド光のような特殊な光の量子状態を作り出すことも可能です。

原文 http://1.usa.gov/oVXdh2
訳 SJN

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