太陽熱発電は電力網の安定化に有効 ― NRELが報告

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米国立再生可能エネルギー研究所(NREL)が、太陽熱発電に電力網の負荷平準化機能をもたせることによって太陽エネルギーの利用拡大を進めることができるとする報告をまとめています。

アベンゴア・ソーラーがアリゾナ州ギラ ベンド近郊に建設中のソラナ太陽熱発電所。熱エネルギー貯蔵設備を持ち、フル稼働時には日没後も7万世帯分の電力供給を行う予定 (Credit: Dennis Schroeder)

再生可能エネルギーを大量導入して電力網に接続する場合、出力変動などの影響が大きくなり、系統電力が不安定化するという問題が指摘されています。とくに、1年のうち4月から5月にかけては、日射量が多くなり太陽光発電量が増える割に電力需要はそれほど上がらないため、電力の過剰供給が起こる可能性があります。これを避けて電力網のバランスを保つため、太陽光発電に対して出力抑制を加えたり、蓄電システムによる電力貯蔵を行うなど、何らかの負荷平準化が必要になるとされています。

今回NRELがまとめた報告は、太陽熱発電がもつ負荷平準化機能の効果を検証するもの。太陽熱発電と太陽光発電を上手く組み合わせて使うことによって、系統電力のバランスを保ちつつ再生可能エネルギーの導入量を増やせることをシミュレーションで示しています。

太陽熱発電プラントでは、太陽熱で熱伝導流体を熱してお湯を沸騰させ、蒸気タービンを回して発電を行います。熱慣性が働くため、流体がパイプを通過して発電プラントに届くまでには10~15分程度の時間がかかります。太陽光発電パネルの上を雲が通過すると瞬時に出力が変動しますが、太陽熱発電プラントの場合、熱慣性があるためこうした急峻な出力変動は起こらず、変動はより緩やかなものになります。これが、太陽熱発電が電力網の安定化に役立つとする1つの理由です。

ソラナ太陽熱発電所の熱エネルギー貯蔵用溶融塩タンク (Credit: Dennis Schroeder)

もっと大きな効果を期待できるのは、太陽熱発電を利用した電力貯蔵です。熱エネルギーの保存媒体となる物質を大型のタンクに貯蔵し、電力需要のピークに応じてお湯の沸騰に使うことが考えられます。

NRELの研究者Greg Glatzmaier氏によると、現時点で最も利用しやすい熱エネルギー保存媒体は溶融塩(高温で液体化した塩)であるといいます。

集熱型太陽熱発電プラントでの溶融塩による熱エネルギー貯蔵の典型的方法は、温度の異なる2つのタンクを用いるものです。「温度が低い方のタンクは293℃、高い方のタンクは565℃あたりに設定する」とGlatzmaier氏は言います。低温側のタンクから集熱タワーへ溶融塩が吸い上げられて加熱され、高温側のタンクへと移されます。高温側タンクでは溶融塩を数日間は565℃の高温状態に保つことができますが、通常は数時間以内に蒸気発生プラントに移して発電に利用することになります。

蒸気発生に使われて温度が下がった溶融塩は、再び低温側のタンクに戻します。溶融塩は200℃以下になると固体の塩になってしまうため、温度は塩が液体の状態で存在できる293℃から565℃の範囲に保ちます。

太陽熱発電プラントに溶融塩貯蔵タンクを設置することで追加のコストが発生しますが、「プラントを発電に利用できる時間が延びるのでコストは回収できる」とGlatzmaier氏は言います。また、溶融塩自体は地球上に豊富に存在している低コストな資源です。

NRELでは、熱エネルギー貯蔵システムを設けた太陽熱発電と太陽光、風力発電を組み合わせて利用した場合に期待できる負荷平準化についてシミュレーションを行いました。

太陽熱発電による熱エネルギー貯蔵のシミュレーション (\’Enabling Greater Penetration of Solar Power via the Use of CSP with Thermal Energy Storage\’ Paul Denholm and Mark Mehos, NREL/TP-6A20-52978 November 2011)

グラフ上(Figure 4)は、年間電力需要の10%を風力発電、20%を太陽光発電で賄うという条件で4月7~10日の発電状況をシミュレーションしたものです。午前中の早い時間を中心に電力供給が需要を上回り、出力抑制が必要になるのが分かります(水色で示した部分が出力抑制される発電量)。この4日間全体での太陽光発電量のうち、約16%が出力抑制される計算になります。年間では太陽光発電量の約5%が出力抑制されるといいます。

グラフ下(Figure 7)は、これに太陽熱発電を加えた場合のシミュレーションです。太陽光発電が電力需要の15%、エネルギー貯蔵機能のある太陽熱発電が10%と設定されており、Figure 4の設定より太陽エネルギーの利用は5%増えていますが、出力抑制を表す水色の部分は減っていることが分かります。出力抑制される太陽光発電量は2%未満に減るとしています。なお、赤線で示したのが貯蔵機能をつけた場合の太陽熱発電の出力、青線が貯蔵機能なしの場合の太陽熱発電の出力です。貯蔵機能なしの場合、太陽熱発電と太陽光発電の出力は同調して推移しますが、貯蔵機能をつけた場合は、日没後の電力需要が高まる時間帯に太陽熱発電による出力ピークをシフトさせることができます。

シミュレーションを行ったPaul Denholm氏とMark Mehos氏によれば、この研究で行った分析は予備的なものであり、太陽熱発電が再生可能エネルギーの導入拡大を助ける実際の効果を評価するためには、より高度な電力網のシミュレーションが必要になるといいます。研究チームは、次の研究課題として、電力会社用のソフトウェアを使ったより完全なシミュレーションを行いたいとしています。


発表資料
参照論文

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