バークレー研究所、モリブデナイトの活性部位を模した新規分子を合成。水素製造に使えるプラチナ代替の低コスト触媒に期待

このエントリーをはてなブックマークに追加
Share on Facebook

米ローレンスバークレー国立研究所が、モリブデナイトの触媒活性部位を模した新規分子の合成に成功したとのこと。プラチナの代替材料として、水から水素ガスを分離するための低コストの触媒開発につながると期待されます。

今回研究チームが合成したのは、モリブデナイトの結晶端部にある二硫化モリブデンの三角形の分子構造を再現した分子です。モリブデナイトのバルク結晶は触媒の観点からは比較的不活性であり、ほとんどすべての触媒作用が活性部位である結晶端部で起こるため、この部位を模した分子を利用して、より効果的で低コストな新規触媒材料の開発を行うことが研究の狙いであるとします。

モリブデナイト複合体と配位子PY5Me2を使って合成された新規分子。緑色がモリブデン原子、黄色が硫黄原子 (Image courtesy of Lawrence Berkeley National Laboratory)

「私たちは、分子化学の手法を使って、モリブデナイトの機能的特質を捉え、触媒作用を担う活性部位の最小単位を合成することに成功しました」とバークレー研究所の化学者 Christopher Chang氏は言います。「これにより、高密度な活性部位を持つ新規触媒の設計が可能になります。つまり、同じ触媒作用を、より少ない材料で得られるということです」

モリブデナイトは、モリブデン硫化物の結晶であり、金属モリブデンを精製するときの主要鉱物です。よく知られている用途は潤滑油ですが、石油や天然ガスから硫黄を取り除くための標準的な触媒としても使われています。これにより、燃料を燃焼させたときに排出される二酸化硫黄を減らすことができます。

また、最近の研究では、水から水素を生成するための電気化学・光化学プロセスを促す触媒として、微粒子形状のモリブデナイトが有望であることも分かってきています。

いまのところ、水素を生成するためのもっとも利用しやすい技術は、プラチナ触媒を使って水分子を水素分子と酸素分子に分解する方法です。しかしながら、プラチナは1オンス2000ドル以上と高価であるため、市場ではもっと安価な代替触媒が求められています。モリブデナイトの産出量はプラチナよりもはるかに多く、プラチナの70分の1程度のコストで済みます。

しかし、モリブデナイトは複数のマイクロドメインを伴う層構造を持っており、それらのマイクロドメインのほとんどが化学的に不活性という問題があるとChang氏は言います。「高分解能の走査型トンネル顕微鏡での研究と理論計算によって、三角形の二硫化モリブデンが触媒の活性部位であることが特定されています。しかし、触媒機能のある結晶端部を高密度に持つモリブデナイトを思い通りに形成することは、極めて難しい課題なのです」とChang氏。

この課題に対応するため、研究チームは、ペンタピリジル基を持つ配位子PY5Me2を使って二硫化モリブデン分子を新たに合成しました。この新規分子は自然には存在しないものですが、安定しており、モリブデナイト結晶端部の三角形の部位と構造的に同一であるといいます。合成した分子によって、モリブデナイトの結晶端部と類似した層を形成可能なことも示されています。

「私たちが合成した分子の電子的構造は、配位子修飾による調整が可能です」と研究チームの化学者 Jeffrey Long氏は言います。「これは、材料の活性や安定性、プロトン還元に必要なオーバーポテンシャルなどを調整して、材料の性能を向上できることを示唆するものです」

2010年、研究チームは、配位子PY5Me2を使ってモリブデンオキソ複合体を合成しました。この複合体は、その触媒作用によって、緩衝水や海水などから水素を効果的に効率よく生成できるものです。今回開発した新分子からモリブデナイト複合体を合成すれば、同様に、酸性水からの水素生成も効果的かつ効率的に行うことができるとしています。現在、研究チームでは、モリブデナイト以外の触媒材料についても、活性部位を模した分子の合成に取り組んでいるとのこと。また、この研究を光触媒にも拡張したいとしています。


発表資料

おすすめ記事

Related Posts Plugin for WordPress, Blogger...

「バークレー研究所、モリブデナイトの活性部位を模した新規分子を合成。水素製造に使えるプラチナ代替の低コスト触媒に期待」への4件のフィードバック

  1.  先日、工具鋼の自己潤滑性とかいう話を日本トライボロジー学会で聞いたが、モリブデンとかカーボン、それにDLCコーティングなどの怪しげな論説とも整合し、油中添加剤の極圧効果にも拡張できる話は面白かった。

  2.  三菱重工さんの冷凍機の磁気軸受の技術は温暖化防止に対する取り組みとして大変感銘しました。しかし、磁気軸受って耐荷重能が低いんだよね。風力発電なんかの重要なエネルギー変換源に使われるにはまだ難点がありそうだ。しかしそういった困難を解決しているのが、その日立金属のSLD-MAGIC(S-MAGIC)という工具鋼だ。この材料は表面でオイルをトライボケミカル反応させて形成されたボールベアリング状のナノ結晶体で分子物理学的に摩擦係数を下げるという。これなら応用範囲が広そうだ。

  3.  凄いグリーンテクノロジーだ。IPCCの最新の発表でも地球温暖化傾向の確度がさらに高まったという。脱石油化を勧めて、日本のエコ技術を海外に輸出して行かないと地球の将来が危うい。

  4.  現在進められているエンジンのダウンサイジング化の流れにも合致する素晴らしい素材だと思う。

コメントは停止中です。