植物材料を使った低コストのバイオ太陽電池、MITらが開発

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マサチューセッツ工科大学(MIT)らの研究チームが、植物成分を利用したバイオ太陽電池の開発を進めているとのこと。数年以内には、僻地で暮らす開発途上国の人々が、農業廃棄物を原材料として自分たちで太陽光パネルを作れるようになるかもしれない ― 最近ネイチャーに論文を発表したMITの研究者 Andreas Mershin氏は、そんな展望を描いています。

光陽極における(a)二酸化チタンと(b)酸化亜鉛ナノ構造の電子顕微鏡画像。(c,d,e)バイオ太陽電池の構造図 (Andreas Mershin et al. DOI:10.1038/srep00234)

この研究には、MITバイオ医療工学センターのShuguang Zhang氏や、色素増感太陽電池の考案者であるスイス連邦工科大学ローザンヌ校のMichael Graetzel氏も参加。今回の成果も、分子複合体「光化学系I」を利用したZhang氏の研究の延長上にあるとしています。

光化学系Iは、植物細胞中に見られる微小な構造体であり、光合成プロセスを担うもの。Zhang氏らの先行研究では、植物から光化学系Iを抽出し、これを化学的に安定させて、従来の太陽電池のような光電変換層をガラス基板上に形成することに成功していました。

ただし、初期のシステムには、太陽電池セルの形成やその安定化のために高価な化学物質や高度な実験装置が必要という問題がありました。さらに、出来上がったセルは、変換効率が低くすぎて実用化できないものでした。電流を生み出すために、高出力レーザーをセルに照射しなければならなかったのです。

Mershin氏によれば、今回の研究ではこのプロセスが簡素化されており、どんなラボでも再現可能なものになったといいます(学部生や高校の理科実験室でも可能とのこと)。新しいシステムの変換効率は、まだ0.1%という低いものですが、それでも以前のバージョンと比べれば1万倍は向上しています。今後さらに10倍以上の向上が必要であるとMershin氏は言います。

変換効率の向上が可能になったのは、より多くの光が光化学系I複合体に当たるようにデバイス表面のナノ構造を設計したことによります。デバイスは、酸化亜鉛(ZnO)の半導体ナノワイヤと二酸化チタン(TiO2)のスポンジ状ナノ構造で構成されており、TiO2ナノ構造にはバクテリアから抽出した光捕集材料がコーティングされています。ナノワイヤは材料の支持構造になると同時に、デバイス下部の支持層に電子を輸送する働きを持ちます。Mershin氏は、この構造を日光が良く当たるように枝を伸ばしている松林から着想したとのこと。

また、ZnOとTiO2は、紫外線の吸収性が高いため、紫外線から光化学系Iが受ける損傷を軽減するという効果もあります。

光化学系Iを抽出する原料はどんな植物でもよく、例えば刈り取った芝生なども使うことができます。また、光化学系Iの濃縮には従来は遠心分離装置が使われてきましたが、研究チームは安価なフィルタを用いる方法を提案。安価な材料で簡単に太陽電池が製造できるため、変換効率が1~2%に届けば十分に実用的なものになるとしています。


発表資料

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