「微弱な信号検出するナノスピーカー、電子回路の冷却にも使える」JQIらが理論構築。MRIや量子コンピュータへ応用期待

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ナノスケールのスピーカー型デバイスによって微弱な電気信号の検出が行えると同時に、電子回路の冷却もできるとする報告を、共同量子研究所(JQI)、ニールス・ボーア研究所、ハーバード大学の共同チームが行っています。まだ理論研究の段階ですが、これが実験的に確かめられれば、低出力での無線信号検出やMRI、量子コンピュータなどの分野に大きな影響を与えるとのこと。JQIは、米国立標準技術研究所(NIST)とメリーランド大学カレッジパーク校が共同設置した研究機関。

提案されているデバイスの一例。マイクロワイヤに接続したコイル内で、原子のスピンによって微弱なRF信号が生成される(マイクロワイヤはキャパシタを形成している)。RF信号の生成によって「ナノ膜」が振動し、これがレーザー光共振器の共振周波数に影響する。出力される光の周波数は、元のレーザーの発振周波数と原子が生成したRF信号の和となる (Credit: Taylor/NIST)

JQIの物理学者 Jake Taylor氏によると、ナノスケールの膜を電子回路と組み合わせたデバイスでは、極めて微弱な信号であっても、信号の強弱に応じて膜が機械的に振動するといいます。この膜にレーザー光を当てて、跳ね返ってくる光の変調を測定することで、信号の読み取りができると考えられます。膜の動きに伴って、光の波長が変化するためです。

光の波長は現在の技術でも非常に高感度に測定できるため、極めて微弱な電気信号によって生じるナノスピーカーの膜の微小な動きを検出するには理想的といえます。

超微弱な電気信号が検出できるようになれば、MRIを使った医療診断が今よりもずっと容易になる可能性もあります。

「MRIの装置は、強力な超伝導磁石をたくさん組み込んでいるため非常に大がかりなものになっています。しかし、もしも読み取りに必要な信号強度を小さくすることができれば、磁石の強さとサイズも減らすことができます」とTaylor氏は言います。「これによって、部屋の中の静かに座ったままMRIの診断を受けることができるようになるでしょう。チューブ型の装置の中に入る必要もなくなります」

Taylor氏によれば、この技術を量子コンピュータに利用することも可能です。量子コンピュータは、量子力学的現象である「量子もつれ」の状態にある光子を利用することで、現在のコンピュータには不可能な計算を行うもの。ナノスピーカーを使うことで、量子プロセッサから出てきた低エネルギーの信号を光子に変換して検出し、量子ビット間で光子のやりとりを行うことができようになるといいます。

さらに、この技術にはシステムに対する冷却効果もあると研究チームは付け加えています。計算によると、ナノスピーカーの機械的振動を光子に変換することによって、かなりの量の熱がシステム外部に吸い出されるとのこと(室温から-270℃まで下がる場合もある)。この熱の吸い出し効果にはシステム内のノイズを低減する働きもあるため、信号検出精度も向上するとしています。


発表資料

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