バークレー研究所、有機金属骨格体による低圧・大容量の水素貯蔵材料開発めざす

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米ローレンス・バークレー国立研究所が、水素を低圧力で大量に貯蔵できる有機金属骨格体(MOF: metal-organic framework)の合成技術の開発を進めているとのこと。航続距離500km程度の燃料電池自動車に必要とされる水素燃料を、安全かつコスト効率良く貯蔵する方法を見つけることが研究の目標であるといいます。

プロジェクトリーダーの一人 Jeffrey Long氏 (Credit: Roy Kaltschmidt/Berkeley Lab)

研究チームの科学者 Jeffrey Long氏によれば、MOFを用いることで圧力シリンダ内の水素ガス貯蔵容量を増やすことができるとのこと。このため超高圧をかけなくても良くなり、より安全で効率的な水素貯蔵が可能になるとしています。

MOFはスポンジ状の三次元骨格構造であり、炭素原子を主成分とする非常に軽量な材料です。「MOFの特徴は、化学合成を用いて材料の表面修飾が可能であり、材料表面に水素を吸着しやすくできること」とLong氏は説明します。

この研究とは別に、Long氏は炭素捕集技術のプロジェクトでもMOFを使っています。こちらのプロジェクトでは、窒素からニ酸化炭素を選択的に分離吸収するためにMOFが利用されます。一方、燃料電池プロジェクトでのMOFのねらいは、混合気体から水素を選択吸収することではなく、できるかぎり大量の水素を貯蔵することです。

現在、燃料電池自動車の航続距離は500km近くに達していますが、これは水素を600~700バール(60~70Mpa)の高圧で貯蔵した場合に限られており、コストがかかる上に、安全面の問題もあります。また、水素に高圧をかけるには多くのエネルギーが必要です。

これまでの研究で、Long氏は、水素の貯蔵容量を2倍以上に増やすことに成功していますが、温度条件は絶対温度77K付近と非常に低温にとどまっています。「研究はまだ極めて基礎的な段階です。目標は、室温条件で従来の4~5倍に容量を増やす画期的な新材料の作製方法を見つけることなのです」とLong氏。「これを実現するために、どんな種類の骨格を作ればいいか。私たちは1つのアイデアを持っています」

Long氏らが開発した水素貯蔵材料の結晶構造の一例。橙色はマンガン原子、緑色は塩素原子、青色は窒素原子、灰色は炭素原子を表す (Jeffrey R. Long et al. (2009) DOI:10.1039/b802256a)

Long氏のアプローチは、骨格体の表面に軽金属のサイトを形成し、水素分子がサイトに結合しやすくするというものです。「私たちは、このアプローチによって、表面に金属カチオンが露出したMOFをすでにいくつか作っています。いま取り組んでいるのは、金属サイト1つにつき1個の水素分子が結合する代わりに、2~3個さらには4個の水素分子が結合できる材料の合成方法をみつけることです。まだ誰もやったことありません」

ここで計算化学者 Martin Head-Gordon氏の出番となります。Head-Gordon氏の研究は、MOFを理論的に解明することで、その水素貯蔵特性を予測し、どんな種類の材料を合成したらよいかをLong氏のチームに指示しようとするものです。「彼は多様なターゲット構造についての計算を行い、時間をかけて合成を試してみる価値のある構造はどれかを教えてくれます。化学合成は非常にコストがかかる労働集約的な作業だからです」とLong氏。

この研究にはGMも参加し、高圧ガスの高精度な圧力測定の面で協力することになっています。また、米国標準技術局からは、中性子回折と中性子分光法の専門家も参加。水素の移動をピンポイントで捉え、水素が金属と結合していることを立証できるようにするといいます。なお、米国エネルギー省では先月、燃料電池自動車向けの水素貯蔵技術に対して700万ドル超の研究助成を行っており、その一環として今回のプロジェクトにも210万ドルの助成があったとのこと。


発表資料

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