イリノイ大ら、損傷時に自己修復する電池を開発中

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米国イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校(UIUC)とアルゴンヌ国立研究所の研究チームが、ダメージに対する自己修復能力をもった電池の開発を進めているとのこと。繰り返し充放電による長期劣化および衝撃などによる物理的損傷の両方に対応する自己修復能力を電池に付与することにより、電子機器の長寿命化をめざすとしています。

金の導電層上に置かれたマイクロカプセル。カプセル内部には液体金属が充填されている。回路が機械的損傷を受けると、カプセルが破けて伝導経路を修復する。カプセル1個は10μm径で、ヒトの毛髪1本の中に10個並べられる大きさ (Image by Amanda Jones and Ben Blaiszik)

科学者たちは、電気伝導性の損失が電池の劣化と機能停止の原因になると考えています。電極上への化学物質の析出、電極材料自体の脱離など、特殊な分子レベルの欠陥については様々な理論がありますが、おそらくそれらは電池の充放電にともなって繰り返される電極の膨張収縮がもたらす不可避のストレスによる劣化・損傷であると言えるでしょう。

いずれの場合も、電気伝導性の損失によって電池の容量は低下します。研究チームが解決しようとしているのはこの問題です。

彼らの考え方は、電池の中に「緊急修理班」を予め常駐させておくというものです。この処理班は赤血球よりも小さな微小粒子で、その内部には液体金属が充填されています。電池部品に加えられた微粒子は、電池のライフサイクルの大半を不活性の状態で過ごします。

しかし、電池が損傷を受けた場合には、微粒子のカプセルが破れ、中身の液体金属が電池に向かって放出されます。液体金属は、電気回路にできた隙間を埋め、断線箇所をつなぎ直し、電気を復旧させます。

カプセルは、様々な事象をトリガーとするように設計されます。例えば、物理的な損傷に反応するカプセルもあれば、異常加熱に反応するカプセルもあります。特定の状態を修復するために、カプセルの内容物をそれに合わせて変えるというわけです。

マイクロカプセルは1950年代から量産されており、ノンカーボン複写紙や擦ると香りが出るシールなどにも使われています。

「私たちは、マイクロカプセルというなじみ深い技術を利用することで、電池の自己修復技術を商用化しやすいものにできると考えているんです」とUIUCの科学者 Jeff Moore氏は言います。

研究チームが最初に行ったのは、電極に配線をつないだ単純なシステムを用いて、断線した場合にカプセルによって回路が修復されるかどうかを調べることでした(上の動画を参照)。

「私たちの新規自己修復材料は、1000分の1秒未満で回路を完全に修復できます」とMoore氏。

研究チームは現在、試作品の電池に組み込んだカプセルのテストに取り掛かっているところです。アルゴンヌ国立研究所の材料科学者で電池の専門家である Khalil Amine氏の支援を受け、リチウムイオン電池に自己修復用カプセルを適用するそうです。なお、この研究は、米国エネルギー省とアルゴンヌ国立研究所が実施している5か年の学際プログラム「エネルギーフロンティア研究センター(EFRCs)」の一環である「電気エネルギー貯蔵センター(CEES)」から研究助成を受けているとのこと。


発表資料

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