MIT、傷口からの出血を瞬時に止めるナノバイオコーティング技術を開発

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マサチューセッツ工科大学(MIT)らの研究チームが、傷口からの出血をほとんど瞬間的に止めることができるナノスケールのバイオコーティング技術を開発したとのこと。これにより、戦場で負傷した兵士の生存率を高めることができるとしています。

血液中に含まれる凝固成分トロンビンの三次元模式図。止血剤としてスポンジにスプレーコーティングされる (Image: Wikimedia/Nevit Dilmen)

研究を行ったのはMITとデンマーク企業 Ferrosan Medical Devices。血液中の凝固成分であるトロンビンをスプレーコーティングしたスポンジを止血剤に用いるというものであり、研究リーダーの工学教授 Paula Hammond氏は、この技術について「包装や携行・保管がしやすく、戦場での使用に適している」と話しています。

出血が止まらなくなることは、戦場での外傷死で最も多い死亡理由とされています。止血帯など通常の止血方法は、頸部など体の部位によってはうまく使えないことが多いという問題があります。また、フィブリン包帯やフィブリン糊は保管できる期間が短く、有害な免疫反応を引き起こす可能があります。キトサンを材料とするバンドエイドを使う方法もありますが、これも複雑な形状の傷にフィットするように成形するのが困難な場合があります。

多くの民間病院では、Ferrosan製の高吸収性ゼラチンスポンジを止血に用いていますが、このスポンジは傷口にあてる前にトロンビン液に浸す必要があるため、戦場での使用には向いていません。そこで研究チームは、予めスポンジを止血剤でコーティングしておき、必要なときにすぐ使えるようにする方法を考えたのです。

これを実現するために開発されたのが、スポンジなどの材料に2つの異なる層を交互に吹き付けるナノスケールのバイオコーティング技術です。研究チームは、自然の凝固タンパク質であるトロンビンとお茶などに含まれているタンニン酸を層状にすることで、有効なトロンビンを大量に含有する薄膜が生成されることを発見。これらの材料はいずれも、すでに米国食品医薬品局(FDA)の承認を得ているため、スポンジ商用化の認可も取りやすいだろうとのこと。

スプレー法の長所は、繊維の内部までコーティングできるためスポンジのトロンビン含有量を増やせることです。マサチューセッツ総合病院の外科医であり外傷外科のチーフとしてアフガニスタンでの従軍経験もあるDavid King氏によれば、従来の止血剤に共通する問題は、出血箇所に対して十分な濃度の止血剤を送り込むことが難しいということであり、今回の新材料はこの点で画期的であるとしています。

スポンジは、一度スプレーコーティングされると、使用前に数か月保存でき、どんな形状の傷にもフィットするように成形が可能。研究メンバーの一人 Anita Shukla氏は「強い力で圧迫することなく、様々な種類の外傷に対して快適に使用できる」と話しています。

Ferrosanが行った動物実験では、スポンジを傷口にあてて人間の親指で60秒間軽く押さえる間に出血が止まったとのこと。これに対して、トロンビンなしのスポンジの場合は止血までに最短で150秒かかり、単にガーゼの当て布をしただけでは12分の実験時間中には止血できなかったとしています。

研究チームは、この止血用スポンジおよび同様の手法で抗生物質のバンコマイシンをスプレーコーティングしたスポンジについて特許申請済み。Hammond氏のラボでは現在、止血剤と抗生物質を組み合わせて1つのスポンジにコーティングする技術に取り組んでいるとのこと。


発表資料

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