マンチェスター大、点欠陥の制御によってグラフェンを常磁性化。スピントロニクスへの応用期待

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マンチェスター大学の研究チームの報告によると、結晶の点欠陥を制御することによってグラフェンを常磁性化できるとのこと。グラフェンを利用したスピントロニクスデバイス開発への応用が期待されます。研究を行っているのは、Irina Grigorieva博士と Andre Geim教授のチーム(Geim氏は2010年にグラフェン研究でノーベル化学賞を受賞)。

グラフェン薄板の光学画像。(a)がフッ素化前、(b)がフッ素化後。スケールバーは2cm (Geim, Grigorieva et al. 2011 / arXiv:1111.3775v1)

研究チームは今回、非磁性体のグラフェンにフッ素などの非磁性体の原子を添加したり、グラフェンの網から炭素原子を取り除くなどの操作を行ってグラフェン結晶に点欠陥を付与。その結果、原子を取り除いた部分にできる空孔や、添加した原子が、鉄原子のような磁性をもつようになったといいます。

論文によると、これらの点欠陥によって生じるのはスピン1/2の磁気モーメントであるといいます。Grigorieva氏は、この現象について「マイナス×マイナスがプラスになるようなもの」だと述べています。

電子顕微鏡でグラフェンデバイスを観察するIrina Grigorieva博士 (Image courtesy of the University of Manchester)

研究によれば、グラフェン中の原子が磁性体として振る舞うようになるためには、点欠陥が互いに離れて存在し、その密度が低くなっている必要があるとのこと。これは、グラフェンに加えられる欠陥が多いと、欠陥同士が接近しすぎて互いの磁性を打ち消してしまうからであるといいます。また、空孔の場合、その密度が高すぎるとグラフェンは分解してしまいます。

論文では、常磁性が最大となったのは、炭素原子1000個あたり1個程度の磁気モーメントの密度のときだったとしています。今回実現された常磁性中心の密度は、これまでグラフェン材料で報告されてきた強磁性体と比べてかなり高いものです。とはいえ、磁気モーメント同士の間隔は平均で8nmより大きく、液体ヘリウム温度(50K)以下であっても磁気秩序が発生するには間隔が開きすぎているといいます。

「観察された磁性は微小なものであり、最大に磁性化したグラフェンでも冷蔵庫の扉にくっつく磁石のようにはならないでしょう」とGeim氏は言います。「しかし、グラフェンに対して何が可能であり何が可能でないかを明確にするのは重要なことです。非磁性体材料の磁性化という分野では、これまで多くの誤信があったからです」


発表資料

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