ヴァンダービルト大、薄膜材料の熱伝導性を制御する新手法開発。電子デバイスの冷却技術に応用可能

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ヴァンダービルト大学の研究チームが、薄膜材料の熱伝導性を調整したり向上させたりする新手法を開発したとのこと。熱伝導性は通常それぞれの材料ごとに決まっているものと考えられていますが、これを制御可能とすることで、様々な電子デバイスの冷却技術への応用が期待できるとしています。

熱伝導性測定用マイクロデバイスの上にボロンナノチューブの組をくっつけておいたところ (Courtesy of the Li Lab)

研究チームの機械工学准教授 Deyu Li氏らは、ボロンの細長い薄片(ナノリボン)を2本組にすると熱伝導性が最大45%高まることを発見しました。熱伝導性の変化は、2本のナノリボンをくっつけるときのプロセスに依存するといいます。研究で用いられたのはボロンのナノリボンですが、この効果は他の薄膜材料にも当てはまるとしています。

「この研究のポイントは、熱による効果を制御するまったく新しい方法として利用できる点にあります。熱の効果は、スマートフォンやコンピュータなどの電子機器設計、レーザーやLEDなどの光学設計にも大きく影響するものです」と同大機械工学准教授で熱伝達分野の専門家である Greg Walker氏は言います(同氏は今回の研究には直接関わっていない)。

Li氏によれば、2本のナノリボンをくっつけているのは弱い静電気引力すなわちファンデルワールス力であるといいます。

「通常、熱の運び手であるフォノンはファンデルワールス界面で散乱するため、2本のリボンが合わさった状態での熱伝導性は1本のときのリボンと等しくなると考えられています。しかし、今回の私たちの発見は、この古典的な見方とはまったく異なるものです。フォノンは散乱せずにファンデルワールス界面を越えることができ、これによって熱伝導性が著しく向上するのです」とLi氏。さらに、研究チームは、種類の異なる溶液を用いてナノリボンの界面を処理することによって、熱伝導性の高低を制御できるようになったとしています。

今回の研究成果の大きな特徴の一つは、この効果が可逆的であるということです。例えば、2本のナノリボンの界面をイソプロピル・アルコールで湿らせ、互いに圧着させてから乾かした場合、熱伝導性は単体のナノリボンのときと同じです。しかし、純粋なアルコールで湿らせてから乾かすと、熱伝導性が向上するのです。そして、再びイソプロピル・アルコールで湿らせると熱伝導性は元の低いレベルに戻るといいます。

「熱伝導性のような基礎的物性を調整するのは非常に難しいことであり、熱伝導性が調節可能であることを実証した今回の研究は大変興味深いものです」とWalker氏はコメントしています。

この発見を最初に応用できそうな分野として、コンピュータ・チップのような電子デバイスにおける熱対策があります。今日では、指の爪ほどの大きさのチップに数十億から数兆個のトランジスタが集積されており、こうしたチップが大量の熱を発するため、過熱防止はチップ設計の主要な要素の一つとなっています。実際、今日マルチコアでのチップ設計が行われている大きな理由の一つは熱対策です。

「界面における熱伝達についてより深く理解することは、電子デバイスの熱対策をより良く行うためのカギとなります」とLi氏。

「ナノ複合体」の設計も、今回の発見が重要な意味を持つ分野です。ナノ複合体とは、カーボンナノチューブのようなナノ構造をもつ添加剤を高分子などに組み込んだ材料であり、フレキシブルデバイスや航空機用構造材料、その他様々な分野への応用に向けて開発が続いています。


発表資料

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