MIT、集光ミラーを使わない新型の太陽熱電変換技術を開発。太陽電池の理論限界値を超える高い変換効率

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マサチューセッツ工科大学(MIT)が、集光ミラーを使わずに太陽熱を集中させて電気に直接変換するデバイスを開発しているとのこと。通常の太陽熱発電に用いられる集光ミラーやタービンなどの部品が不要となるため、発電システムの簡素化とコスト低減につながる可能性があります。また太陽エネルギーを電気に変える変換効率も、従来の太陽電池より高くなるとしています。

角度選択型太陽熱電変換システムの略図 (Peter Bermel, et al. Nanoscale Research Letters 2011, 6:549/ doi:10.1186/1556-276X-6-549)

太陽熱を利用した発電システムとしては、太陽熱でお湯を沸かしてタービンを回し、タービンの回転による運動エネルギーを電気に変換する方法が一般的です。その他に、熱電変換材料を使って熱エネルギーを直接電気に変換する方法もあります。どちらの場合も、太陽熱を集めるために集光ミラーを使っている点は同じです。

一方、今回MITが開発した技術では、集光ミラーで太陽光を集中させる代わりにフォトニック結晶の性質を利用して、熱電変換材料から太陽熱が逃げないようにしています。熱電変換材料の表面に、微小な孔を精密に間隔を揃えて並べるのです。

太陽熱電変換システムの変換効率。a)角度選択性がない場合 b)角度選択性を最適化した場合 (Peter Bermel, et al. Nanoscale Research Letters 2011, 6:549/ doi:10.1186/1556-276X-6-549)

このアプローチは、地球の温室効果に似ています。太陽光に含まれる赤外光は、材料表面の孔からチップ内に入射しますが、チップ内で反射した光は外に出ることができなくなります。これは、孔を通り抜けできる光の角度が極めて狭くなるように、孔の配置と形状が精密に設計されているためです。残った光は内部にとどまり、材料を加熱します。

研究チームのPeter Bermel氏の説明によれば、通常の暗色系の光熱吸収材を直接日光に当ててもお湯より熱い温度にならないのは、材料が熱を吸収するのとほとんど同じ速さで放熱しているためであるといいます。効率的に発電を行うためには、もっと高温にする必要があります。パラボラ型ミラーを使ったり、平面ミラーをたくさん並べたりして太陽光を集中させれば、より高い温度が得られますが、システムが大規模かつ複雑化するため、コストも高くなります。

「私が注目しているのは、従来の枠組みとは異なった方法です。太陽光を熱的に集中させるのです」とBermel氏は言います。捕捉した太陽光を材料内部で反射させても、デバイスが吸収できる熱量は通常の黒い物体と変わりません。「しかし実際には、デバイスは極めて高温になります。吸収された熱の多くが、再放熱されることがないためです」

こうしたシステムは、大規模化することによって、既存の発電システムに十分競合できる効率的なものになるとBermel氏は言います。

また、このシステムは標準的なチップ製造技術を使用してシンプルに作製可能。これに対して、従来の集光システムに使用されるミラーは極めて精巧な光学設計を必要とする高価な部材であるというのがBermel氏の主張です。

一定温度で動作させた角度選択型太陽熱電変換システムの変換効率。材料にシリコンまたはゲルマニウムを使った場合、どちらもショックレー・クワイサー限界を超える値が得られる (Peter Bermel, et al. Nanoscale Research Letters 2011, 6:549/ doi:10.1186/1556-276X-6-549)

次の研究課題は、様々な材料にこの構造を適用し、最も効率良く発電できる材料を見つけることだといいます。Bermel氏によると、従来の熱電変換材料による太陽エネルギーの変換効率は最高でも10%ですが、角度選択アプローチを用いることで、35~36%に向上できるとのこと。これは、従来型の太陽電池の変換効率の理論限界(ショックレー・クワイサー限界)を超える高い値です。

太陽電池ビジネスでは「1%程度の変換効率の差でも重要とされる」とBermel氏は指摘。この点で彼の研究はまだ主に理論段階であり、今後はより実用に近いデバイスの作製と検証を行うことになるとしています。また、これまでのところ、理論の正しさを実証する予備的な研究成果がいくつか上がっているともいいます。

研究メンバーには加わっていないプリンストン大学電気工学准教授 Jason Fleischer氏は、Bermel氏らの研究について、「従来の非集光デバイスと比較して著しい変換効率の増加が期待され、小さなデバイス1つで従来の大規模なシステムと同等の電気を生み出すことができるもの」と評価しています


発表資料

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