ミカヅキモがストロンチウム90を分離固定する仕組み、ノースウェスタン大とアルゴンヌ国立研究所が解明

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緑色藻類のミカヅキモが放射性同位元素ストロンチウム90を選択的に分離固定する仕組みが解明されたとのこと。ノースウェスタン大学とアルゴンヌ国立研究所の研究チームが発表しました。ミカヅキモがこうした能力を持っているという報告はこれまでにもありましたが、その仕組みはよく分かっていませんでした。

ミカヅキモの共焦点顕微鏡画像 (Image courtesy of Argonne National Laboratory)

ストロンチウム90は、核分裂の過程で生成される放射性物質の一つであり、使用済み核燃料では全成分の約3%がストロンチウム90です。ストロンチウム90の半減期は約30年あり、イットリウム90に崩壊するときにベータ粒子を放出します。ストロンチウム90は人体の内部でカルシウムと同様に処理されるため、特に危険であるとされます。事実、ストロンチウムの化学的構造はカルシウムとよく似ており、実験室の中でさえ二つを分離するのは非常に難しいといいます。体内に取り込まれた場合、ストロンチウムは骨に蓄積されます。ストロンチウムの同位体の中には人体にとって無害なものもありますが、ストロンチウム90は癌などの深刻なリスクをもたらし、また、何年もの期間にわたって被ばくが続きます。

ここ数年、ミカヅキモなどいくつかの生命体がストロンチウムを選択的に分離する能力をもつことに研究者の関心が集まっています。どういうわけか、これらの藻類は、カルシウムとストロンチウムが混合した試料からストロンチウムだけを抽出して固定できるのです。この能力は、危険なストロンチウムの廃棄物の量を減らすために利用できる可能性がありますが、ミカヅキモがどのようにしてこの作業を行っているのかは明らかになっていませんでした。

藻類における(Ba,Sr)SO4結晶の元素分布を蛍光X線顕微鏡法によりマップ化した画像。細胞はバリウムとストロンチウムを添加した培地で培養した。(A)が硫黄、(B)がバリウム、(C)がストロンチウム。(D)はこれらを重ね合わせた画像で、白い点で表した高濃度のポイントは(Ba,Sr)SO4の結晶があることを示している。低いモル比率ではあるが、結晶中にストロンチウムが含まれていることが分かる。結晶には、液胞の先端近くに表れているもの(矢印のポイント)、その他の部位に表れているもの(矢じりマークのポイント)などがある。16.7keV、ドウェル時間1秒、ステップサイズ1μmで撮影 (Image: M.R. Krejci et al., J. Struct. Biol. 176, 192 (2011). (c)2011 Elsevier Inc. All rights reserved.)


 
研究チームは今回、アルゴンヌ国立研究所にある放射光施設 Advanced Photon Source (APS) で蛍光X線顕微鏡法(XFM: x-ray fluorescence microscopy)とX線吸収端近傍分光法(XANES: x-ray absorption near-edge spectroscopy)を使ってミカヅキモがストロンチウムを分離固定する様子を分析しました。まず、XFMを用いて、細胞内のすべてのポイントでのストロンチウムと硫黄の量を定量化し、これらの要素の細胞中でのマップを作成。このマップを電子顕微鏡の画像と相関させ、ミカヅキモの液胞中でのストロンチウムと硫黄の濃度を測定しました。また、硫黄K吸収端でXANESを用いることにより、液胞中の硫黄がタンパク質の成分ではなく、無機硫酸塩であることも確定しました。

さらに研究チームは、細胞内でのバイオミネラル化によってストロンチウムが結晶化する場合と、そうならない場合という二つの条件下で測定を行うことによって、液胞中の硫黄濃度が決定因子となってストロンチウムの選択的分離が引き起こされることを突き止めたといいます。従って、ミカヅキモがストロンチウムを選択的に分離して結晶化する能力は、ストロンチウムに関わる特殊な輸送機構によるものではなく、液胞中の硫黄の量のコントロールによるものであると考えられます。この種の選択性は、「硫黄トラップ」機構と呼ばれるものです。

この機構が解明されたことで、研究チームは、汚染された環境を改質するためにミカヅキモが利用できると考えるようになっています。ミカヅキモは、光と水さえあればこの改質作業を行うことができるため、環境問題に対するエネルギー効率の良い解決策となる可能性があります。ただし、これが実用的な方法であるかを判断するためには、ミカヅキモの放射線耐性の測定など、さらなる研究を進める必要があるとしています。


発表資料

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