NIST、高品質GaNナノワイヤを開発。LED、顕微鏡、化学センサなど多方面で応用展開

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米国標準技術局(NIST)Physical Measurement Laboratory (PML)の研究チームが、シリコン基板上でのGaN(窒化ガリウム)ナノワイヤの結晶成長技術を開発したとのこと。新型のLEDやレーザーダイオード、超小型共振器、化学・バイオセンサ、高感度顕微鏡用探針など幅広い応用が期待できるとしています。

分子線エピタキシー法で成長させたn型GaNナノワイヤの構造。表面を覆っているp型GaNの薄い殻はハロゲン化物気相エピタキシー法で形成 (Credit: Aric Sanders and Albert Davydov/MML)

高効率LED照明に期待

今回PMLが開発したのは、ほぼ無欠陥の六方晶系GaNナノワイヤをシリコン基板上に非常にゆっくりと成長させる技術。堆積方法として分子線エピタキシー法(MBE: Molecular Beam Epitaxy)を用いており、触媒粒子を使わずにナノワイヤを自然に形成できるといいます(触媒粒子は不純物として残留し、GaNの品質を劣化させる)。この方法では、長さ10μmのナノワイヤを成長させるために2~3日かかりますが、欠陥のないほぼ完璧な結晶構造が得られるとしています。

GaNを用いた既存のLED製造技術では、結晶格子に不整合があるサファイヤなどの基板を使っているため、結晶に歪みや欠陥が生じ、発光効率を下げる要因となっています。また、従来の平面構造のLEDでは、LED内部での反射によって光の取り出しが阻害されるという問題もあります。反射した光子は利用可能な光として外部に放出されるかわりに、デバイス内部で捕まってしまうのです。

GaNナノワイヤLEDは、結晶の無欠陥性により、発光効率が著しく向上します。さらに、ナノワイヤを周密に配列させて「森」のような形態にすることで、平面型LEDよりも光の取り出し効率が上がるといいます。

写真中央、オレンジ色の部分が光励起されたGaNナノワイヤレーザー。実際のレーザー出力は波長370nmの紫外光のため裸眼では見えない。レーザー発振しているナノワイヤは、長さ10μm、直径200nm程度。写真上部の金属プローブで、近接効果がナノワイヤのレーザー特性に与える影響を測定している。周囲に黒く見えるのは励起されていないナノワイヤ (Image courtesy of NIST)

しかし、GaNナノワイヤLEDについての実験・計測が進むにつれ、難しい課題もいくつか出てきています。例えば、p型GaNは、既存のどの方法を使っても成長させるのが難しいとのこと。また、ナノワイヤに接続するための性能の良い電極を作ることも非常に困難であることが分かってきています。これは、ナノワイヤが平坦でなく、電極に使われるほとんどの金属膜と比べて厚みが大きいためであるとのこと。ナノワイヤの三次元形状では、空孔形成や化学的不純物の捕捉が電極付近で起こりやすくなり、電極の品質が劣化。ときには電極として使えなくなる場合もあるといいます。

このため、研究チームでは、ナノワイヤを規則的に配列した状態で成長させる方法を探しているところです。最近の成果としては、幅200nm程度の間隔で格子状のパターンをつけた窒化シリコンのマスク層を基板上に設けることにより、非常に規則的に並んだワイヤが選択的に成長できることが分かってきたといいます。

幅広い分野で進む応用研究

GaNナノワイヤの用途は光源だけにとどまらず、様々な分野に応用可能です。GaNには、高温の影響を受けにくい特性があるため、これを利用した高出力デバイスへの応用研究も行われています。例えば、ナノワイヤを使った電界効果トランジスタ(FET)に関して、電荷輸送特性を精密に測定する研究が進められています。また、GaNナノワイヤが持っている機械的ロバスト性を発振器に応用する研究もあります。

ナノワイヤの森 (Image courtesy of NIST)

機械的な品質が高く、質量が微小であるというナノワイヤの特性を組み合わせることで、アトグラム以下の領域での質量検知に応用する方法も検討されています。PMLとコロラド大学の共同研究チームでは、この方法でおよそ0.01アトグラムあるいは数10ゼプトグラムの感度が出せると推定(ウイルス1個分の質量がおよそ1アトグラム、即ち10の18乗分の1グラム)。このスケールでの質量を直接測定する方法は、まだありません。

GaNナノワイヤを探針とする新規の電気接触式多機能走査型プローブ装置の開発も期待されています。既存の近接場走査型光学顕微鏡(NSOM)では、開口径10~100nmの走査型光学探針(終端が先細形状になっている受動光学ファイバ)を用いますが、こうした探針は機械的・化学的に不安定であり、寿命が数時間から数日と短いのが問題。一方、GaNを探針に用いるNSOMでは、電気的接触による多機能化が可能となり、発光、光検出、原子間力顕微鏡法(AFM)、高周波AFMなどの機能を組み合わせられると考えられます。

また、GaNナノワイヤは化学センサ、バイオセンサ、ガスセンサなどの用途にも適しています。現在進行しているNISTのMaterial Measurement Laboratoryとの共同研究では、二酸化チタンのナノクラスタとGaNナノワイヤのタンデム構造を用いて、ベンゼンやトルエンのような芳香族化合物の検出が行われており、興味深いデータを得ているところだといいます。バイオセンサ関連の研究も、すでに一部が論文発表されています。


発表資料

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